今年のプロ野球ドラフト会議では、育成も含め128人が指名された。アマチュアでプレーする多くの選手にとって、夢でもあるプロへの道が開かれた。その一方で、希望しながら指名がなかった選手や、このタイミングではプロ志望届を出さなかった選手もいる。彼らの思いに迫った。

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BBCスカイホークスの渡辺一生投手(17)は目標を大学進学に切り替え、4年後のドラフト再挑戦を目指す。

神奈川県内の強豪高校で将来を嘱望され、甲子園を目指していたが、2年生になり、部になじめなくなった。日本野球連盟(JABA)には属さず、アカデミー方式で活動するBBCスカイホークスに移籍。通信制課程の学校に移り、高校卒業も目指している。異色の経歴ゆえではなく、最速148キロの本格派サウスポーとして、スカウトの注目を集めた。ただ、チーム初のNPB入りはかなわなかった。今後は大学でプレーを続ける予定だが、決断に至るまでには多くの人たちの支えがあった。

数球団の入団テストを受け、手応えも得ていた。「行けるかなと思ってました。でも結果はダメでした。ドラフト当日は『呼ばれなかったか…』と思ってました」。期待した分、落胆は大きかった。練習に足が向かなくなり「もう野球をやめた方がいいのかもしれない」と悩み始めた。

そんな渡辺に、仲間たちが手を差し伸べた。同い年で気心を知る渡部順一朗外野手(18)からは「練習、来いよ。監督さんやコーチと話してみなよ」というメッセージが届いた。普段から仲がいい1つ年上の満保一平内野手(19)は「おいっ、大丈夫か!」と、あえて普段通り明るく接してくれた。「あの2人の存在は大きかったです」。彼ら以外にも、チームメートからたくさんの励ましの言葉をもらった。

もう1人、憧れの人が強く背中を押してくれた。ボーイズ時代の先輩で、現在は東北福祉大でプレーする笹生悠人投手(2年)。「生で見た時に、こんなにすごい投手がいるんだ」と驚かされて以降、目標とする存在だ。今後について相談すると「1度、野球をやめてみてもいいんじゃないかな。また始めたくなれば、やればいいし。空白の時間があってもいいと思うよ」と自分の気持ちを否定せず、受け止めた意見をくれた。「中学の時から、笹生さんがいたから頑張れたんです。あの言葉のおかげで、野球をちゃんと続けようと思いました」。心機一転、再びグラウンドに戻ることができた。

大学での4年間では、技術以上に人間として成長することを目標に掲げる。周囲の人たちへの思いを「今回、ドラフトで指名されなくて恩返しができませんでした。4年後『プロ野球選手になれました』と報告できるようにしっかり結果を出して、恩返ししたいです」と力強く話した。数多くの人たちに支えられ、応援されている。そのことを力に変えて、次こそ夢をかなえる。【阿部泰斉】