さまざまな元球児の高校時代に迫る連載「追憶シリーズ」。第17弾は日本ハム斎藤佑樹投手(29)が登場します。

 2006年(平18)、早実エースとして甲子園に登場した斎藤は、マウンド上で青いハンドタオルで汗をふいたことから「ハンカチ王子」という愛称がつきました。

 引き分け再試合となった駒大苫小牧との決勝戦を制し、日本一に輝くと、人気は最高潮に達しました。スポーツメディアのみならず、ワイドショーでも取り上げられる有名人となりました。

 文武両道を目指して早実に入学した斎藤は、群馬の実家から片道約2時間をかけて通学していた時期もあります。そんな「ハンカチ王子」の高校時代を全8回でお送りします。

 9月12日から19日の日刊スポーツ紙面でお楽しみください。

 ニッカン・コムでは、連載を担当した記者の「取材後記」を掲載します。

取材後記

 手に汗握ってテレビ画面を見ていた。北海道出身の私はあのとき、駒大苫小牧の3連覇達成を心から願っていた。だから斎藤は、「敵」として映っていた。

 あのときの「敵」は、「味方」になった。早大を経て、北海道日本ハムに入団。私も当時から、担当記者をしていた。フィーバーはものすごく、ゆっくりと話をするのは入団からしばらくたってからだったが、ていねいに自分の言葉で、真っすぐに目を見て話をしてくれる姿に、すっかり「敵意」は喪失した。ある意味、偶像のような「ハンカチ王子」というキャラクター。いまでも週刊誌ネタとしておもしろおかしく書かれることも多いが、身近で取材していると純朴な青年という印象が強い。

 今回の企画では、数々の関係者にも話を聞いたが、必ず「斎藤はどうですか? 」「いつ1軍に上がれますか? 」と逆質問された。皆気にしている。応援している。私なんかよりも、よっぽど近くで接してきた方々だ。真の斎藤佑樹の姿に、魅了されているのだろう。

 複数の関係者から出てきた話。斎藤は絶対的エースでチームの中心でありながら、控え組の面々と仲が良かったのだという。通常はレギュラー組と控え組の間に、どうしても生まれる距離が、斎藤の学年にはなかった。斎藤の醸し出す雰囲気が、チームの輪を強固なものにしていたのだろう。 斎藤は今回の取材で「仲間って大事だと思います。自分ひとりでやるのってきついじゃないですか。でも考えを共有していくというか、巻き込みあっていく。ひとりでも『甲子園に出なくてもいいや』とか『ベスト8でいいや』って思うヤツがいたらダメだったと思うんです。みんなで同じ目標に向かっていったから、できた」と話している。

 そういえば、早大で優勝した際の有名なインタビュー。「何かを持っていると言われ続けてきましたが、きょう何を持っているか確信しました。それは仲間です」と語っていたっけ。単に幸運のもといい仲間に巡り会えているのではなく、斎藤自身が引き寄せているのではないだろうか。そう感じる。

 江川卓さんからスタートし、数々の名選手の高校時代をお伝えしてきた当企画だが、斎藤佑樹は初めて登場する現役のプレーヤーである。担当記者も1年間チームに帯同しながら、話題を読者に提供する。近くで過ごしている「仲間」のひとりとして、復活を目指す斎藤の今後を、伝えていきたい。【本間翼】