ベースボールライターの小関順二(65)に聞いた番外編の第2回は、松坂以後のベストナイン。入念な取材から9人をピックアップした。(敬称略)

横浜の松坂大輔
横浜の松坂大輔

 投手はやはり松坂。

 小関 松坂以来、この20年で野球が変わったと思う。ダルビッシュ、田中将大、前田健太、菊池雄星、藤浪晋太郎ら。次点は多数います。ここにきて「10年に1人」っていう選手の輩出ペースが加速していますよね。

 高校野球の指導者のレベルアップ、トレーニング理論の進化や環境の整備、動画や指導書など情報量の増加。プラス要素も多数あり、甲子園の注目は、学校から個にシフトしていると小関は指摘する。

 今年も、広陵・中村奨成と早実・清宮幸太郎という2人の高校生スターがファンを楽しませた。

 小関 清宮、中村は、松坂以降では文句なし。中村の守備力は歴代NO・1じゃないですか。バント処理、あんなの見たことない。打撃に注目がいきますが、彼はディフェンスですよね、肩の強さと。この選手が、プロで成功しないことが想像できない。清宮は3年間、スランプがないのがいい。そもそも本塁打バッターって、なかなか出てこない。清原以降で言えば、松井がいて、中田がいて、1本塁打ですが大谷。大谷は0勝2敗ですけど、藤浪から本塁打を打った。そして清宮。この30年で5人しか数えられない。筒香だって、甲子園でここまで鮮烈ではなかった。

 俊足にも心が躍る。大阪桐蔭から立大に進んだ峯本匠内野手(3年)は2年時の13年春(遠軽戦)夏(明徳義塾戦)でランニング本塁打。智弁和歌山の西川は中学2年の練習試合を取材して衝撃を受けた。

 小関 西川、バントで一塁到達が4・2秒台。今では佐野日大から中大の五十幡亮汰が3秒台を出しますが、当時4・2なんて見たことない。だいたい5秒台ですよ。しかも中2、ビックリしました。遊撃は、甲子園での坂本勇人の印象が薄いので、今宮ですね。

 外野手には、野球の華である本塁打を求めたい。筒香は2年で名門・横浜の4番を務め1試合2発を含む3本塁打をマーク。中田は3度の甲子園で4本塁打。2年秋の近畿大会準決勝の市川(兵庫)戦では、紀三井寺球場の場外、2軒の民家を越える160メートル弾を目撃している。「あの本塁打はライター3人で見ていたんです。笑いが止まらなかった」。こんな快感があるから、野球観戦はやめられない。(つづく)

【金子航】

小関順二氏が選ぶ松坂以後の甲子園ベストナイン
小関順二氏が選ぶ松坂以後の甲子園ベストナイン