プロ入り最短のKO。先発して1/3回で無残に打ちのめされて2軍落ちした。現在炎天下で懸命に修正ポイントをさぐりながら、厳しい練習に取り組む中、阪神藤浪晋太郎投手(24)が8月4日、鳴尾浜球場で行われたウエスタン・リーグのソフトバンク戦に先発した。両チームが2ゲーム差で競う首位攻防戦で7回を投げて1失点。勝ち投手となってチームの勝利に貢献したが、これはあくまでも2軍戦。復活の2文字を考えると厳しいピッチング内容だった。

 早いテンポで投げていた。相手バッターがタイミングを合わせるのに一苦労。嫌がって「待った」を要求するシーンが何度か見られた。これも、修正課題の中の1つだろうが、ただ投げているだけでフォームにメリハリがないため、肝心な球の勢いに欠けていた。選手の現状を分析する新兵器、トラックマンでの球速はMAXで156キロが出ていたというが、球に威力がない分、平凡な球にしか見えないし、空振りも少なく感じた。目下、借金生活(8月6日現在)の1軍が今後のペナントレースで逆襲をかけるためには、必要不可欠な存在だが、もう現状が2年近く続いている。早期復活は難しい。果たしてこのままでいいのか……。

 ピッチングにも不安が見え隠れしていたように見えた。マウンド上で何か考えているのだろう。フォームのこと、コントロールのこと等々だろうが、球が手から離れる瞬間に細工する。普通は投げようと決めたところにだけ集中して投球するものだが、恐らく藤浪の中には「抜けたらいかん。引っかけたらあかん」など、余分なことが頭をよぎるのだろう。だから球に本来の力がない。

 「個人的にはまだまだかなと思う。今回は結果的に打球がいいところに飛んでくれたり、併殺が取れたりとかラッキーでしたが、自分としてはもっと確信的なものを持って投げていけたらな、と思う」は藤浪である。間違いなく、ありとあらゆることを考えて修正しているが、自分のピッチングに確信を持てないのが現状だ。細工する必要なんてない。それより1球たりとも力を抜くな。自分を信じてすべて全力投球することが復活のカギと見るが……。

 矢野監督もこんな見方をしている。「見ていて物足りない面はありますが、僕は去年の晋太郎の最低の時を見ていますから。それを考えたら底は抜けています。目指すところは高いが今は着実に地力をつけていく段階。僕はこれでいいと思いますけど。彼にはよく言うんですよ。ピッチャーはなあ、少々四球を出そうが打たれようが、相手に点をやらなかったらいいんや、とね」やや方針に変化ありと見た。要するに、細々と藤浪に要求することが逆効果であると見たのだ。

 急がば回れと言う。初心忘れるべからずとも言う。現状を見る限り早期復活は望めない。どうだろう。この際、初心に帰って、ゼロからスタートしてみる手もあると思う。本人はこんな話もしている。「一度失った信頼は簡単に取り戻せるものではない。自分の技術を上げていくことだと思うし、いいピッチングをすることに集中していきたい」と--。もう藤浪も入団して6年目を迎えている。この世界の流れはよく分かっているはず。極端な話、一度、頭を空っぽにして、土台作りというか、思いっきり走り込んでみるのもいいかもしれない。

 「試合が答え合わせになる。シンプルに結果を出していく。それしかない」(藤浪)。シンプルに勝るものはない。急ぐな。自然が一番。失った自信は結果を出して得てほしい。確信は自信から生まれる。自分の持ち味を考えた時、藤浪には人がうらやむ150キロ台の速球がある。復活には全力投球だ。【本間勝】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「鳴尾浜通信」)

ウエスタン・リーグのソフトバンク戦に先発し、7回1失点だった藤浪(2018年8月4日撮影)
ウエスタン・リーグのソフトバンク戦に先発し、7回1失点だった藤浪(2018年8月4日撮影)