6回表広島1死、鈴木誠也は左翼越えソロ本塁打を放つ(2018年7月24日撮影)
6回表広島1死、鈴木誠也は左翼越えソロ本塁打を放つ(2018年7月24日撮影)

 明らかにスーパースターへの道を歩いているな-。7月24日から阪神-広島3連戦(甲子園)で、これまでの思いをさらに強くしました。

 広島の若き4番打者・鈴木誠也外野手の話です。

 24日の第1戦、2点リードの6回でした。マウンドには阪神期待の本格派右腕・望月惇志がいました。現在はブルペン要員ですがストレートに力がある望月には、金本知憲監督も大きな期待を寄せています。この時点で広島が2-0の展開でしたが、まだ勝敗の行方は分からない。

 そんな中での期待のマウンドでした。しかし鈴木が、その願いを砕きます。150キロストレートを豪快に左中間スタンドにたたき込みました。本塁打は過去に数多く見ましたが、安打を打つようなスイングで、そのままスタンドインさせるキレのよさというか、豪快さというか、本当に目を見張る1発でした。

 望月にとってはこれがプロ初被弾でした。将来、望月が阪神の主軸に育ったとして、その男から最初に本塁打を放ったのは広島の鈴木ということになります。1点以上に大きな意味を持つ本塁打とも言えます。

 鈴木は1カ月前の6月24日、同じ甲子園での阪神戦で抑えのドリスから満塁本塁打を、やはり左中間席に放っていました。日本人、右打者では本当にもっとも光り輝いている存在でしょう。

9回表広島1死満塁、鈴木誠也は左越え満塁本塁打を放つ(2018年6月24日撮影)
9回表広島1死満塁、鈴木誠也は左越え満塁本塁打を放つ(2018年6月24日撮影)

 しかもチームが連覇し、さらに3連覇も濃厚な現状で出てきた若き主砲という存在。これがスターです。

 打撃以前に驚かされたのがヘアスタイルの理由でした。7月20日からの巨人3連戦前に丸刈りにしています。新聞などで知っていましたが、目の当たりにすると、本当に見事な刈りっぷりです。

 「実はなんか悪いことをしたのか?」。もちろん冗談ですが、そんな感じで声をかけると苦笑しながら鈴木はこんな話をしたのです。

 「いや~。ボク(頭髪が)なかなか乾かないんですよ。頭を洗うと結構、長くドライヤーをかけないといけないんですね。それで、こないだもドライヤーしてたんですが、なんかめんどくさいな~と思って。それに、こんなことで時間使ってる場合じゃないよな、何してんだ、オレ、とかと思えてきて。だから…」

 おしゃれに気を使いたい盛りの23歳としては、にわかには信じ難い理由ですが、そこがやはりこの男だな、と思ったのです。頭の中を占めているのは、まず野球で結果を出すこと。若いながら4番の責任もしっかり感じているということです。

 緒方監督とも鈴木の話をしました。「アイツを育てようとかと思って4番を打たせているのではない。ダメなら代えますよ。だからこそ、ものすごい苦しい思いをして、アイツはやっていると思います」。厳しさと期待と愛情と。ここが広島の強さでしょう。

 5球団が3連覇を止めるのは、本当に、至難の業だと思ってしまいます。

ファンの声援に丸刈り頭をさすって応える広島鈴木誠也(2018年7月21日撮影)
ファンの声援に丸刈り頭をさすって応える広島鈴木誠也(2018年7月21日撮影)