「お~ん、終わりよ。これで終わり」。岡田彰布は宣言した。2023年シーズンに向けての補強は完了。終わりよ…はそれを指す。

特に入れ替えが激しかったのが外国人選手である。今シーズン、8人の外国人選手が在籍。ところが残ったのはカイル・ケラーひとり。7人が契約を打ち切られた。8分の7って、これは相当ひどい確率といえる。とにかくチームの役に立たなかったということで、残留しても来シーズンの可能性は見いだせない。そういう判断で7選手を切った。

外国人に恵まれることの少ない球団というイメージは拭えぬまま。それを覆すために今オフ、新たに4人の新外国人選手を獲得した。近く正式に発表される手はずになっている。

さあ、岡田はどう起用していくのか。そもそも岡田は過度な期待はしていない。獲得検討の際に見る個々人のビデオはいわゆる「セールスビデオ」であることが多く、基本的にいいところを映したものばかり。それを岡田は長い経験値からわかっている。だから外国人を軸に考えない。

いかに日本の野球になじめるか。性格はどうなのか。「そんなん、性格とか関係ある? 少々難があっても、打ってくれたら、それでエエやん。打ってくれるなら何億払ってもええんとちゃうか」。岡田の考えははっきりしている。ただし、チームに悪影響を及ぼすと判断すれば容赦しない。

こんな話が残っている。2008年、巨人に逆転され、阪神を去った。1年間、評論家として活動した2009年オフ、オリックスから誘われ、再びユニホームを着ることになった。2010年、オリックス監督の1年目、チームには超大砲がいた。まさしくチームの軸、打線の核になるカブレラだった。西武での実績は申し分なし。オリックスでは4番。当然のことだった。

迎えた開幕戦。岡田はメンバー表の4番のところにこう記した。「DHカブレラ」と。するとカブレラは猛反発してきた。「オレは守る。ファーストで出る」と伝えてきた。首脳陣で検討してできたオーダー、ポジションだったのに、カブレラは従えないといってきた。

大男からのクレーム。4番にへそを曲げられたら…なんて心配をよそに岡田は直接、カブレラに伝えた。「それなら使わん」。試合直前、メンバー変更となった。実際、その開幕戦でカブレラの出番はなかった。

翌日、カブレラから頭を下げてきた。反省したとも言った。すると岡田は彼を起用した。けじめはついたとして、その場を収めたわけである。

後日、聞いた。「そんなん当たり前やろ。チームで決めたことに従えないなら、使わんよ。そら外国人選手には配慮するけど、遠慮はせん。それでチームが乱されることの方が大きいからな」。

外国人選手の扱い、人心掌握術に岡田はたけている。褒めるわけではないが、過去にそれを物語る実績がある。現役時代、バースやパリッシュをチームになじませ、指導者になってからはアリアス、シーツらを優良外国人に仕立てた。それは内面もあるが、技術論で論破できるだけの知識があり、外国人もそれを認めたから従った。

先日、ラジオ番組に出演した際、新外国人選手の起用法に言及している。ポジションはレフトで、2人いる野手を同時には起用しないとした。打順もできれば3番。あくまでつなぎ役として…という限定的な考えを明かした。

あくまで打線の軸は大山であり、佐藤輝なのだ。そこにマッチする外国人であれば起用するけど、ダメと判断すれば、見切りも早い。ダラダラと上昇を待つことはない。それをしてしまうと今年と同じ。チームに悪影響を及ぼす危険性があるからだ。さらにいえば、外国人を見切っても、代わりの日本人選手は豊富にいる。そういう手ごたえを岡田はつかんでいる。

あくまで外国人選手はサブ。ゼロベースで考え、そこにプラスを多くもたらしてくれれば…という考え方だ。理想というならヤクルトのサンタナ、オスナのような存在。岡田がどういう風に外国人を掌握していくのか、これも見どころのひとつである。(敬称略)【内匠宏幸】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「かわいさ余って」)

2010年オープン戦 オリックス対阪神 4回裏無死、本塁打のカブレラを出迎える岡田彰布監督(2010年3月11日撮影)
2010年オープン戦 オリックス対阪神 4回裏無死、本塁打のカブレラを出迎える岡田彰布監督(2010年3月11日撮影)