岡田彰布との付き合いは43年になる。早稲田大からドラフト1位で入団。阪神との交渉が始まってから、毎日のように大阪・玉造の実家に通った。

父勇郎、母サカヨと顔なじみになって、かわいがってもらった。岡田の後援会の面々とも親しくなり、会の集いがあれば必ず誘いを受けた。岡田は当時から酒豪だった。2人で夜な夜な、場末のスナックにも行った。彼女がいて、道頓堀の橋の上で、デート中に出くわし、僕の彼女も交えて4人で映画館に行ったこともあった。

あの頃、キミは若かった…と懐かしく思う。そして岡田も年になったな…と、自分の年齢を忘れて、感慨にふけっている。パンチパーマをかけるほどの髪の毛だったのが薄くなり、顔には深くシワが刻まれている。

それ以上に年齢を感じるのが選手たちとの年齢差。いまの阪神は本当に若い戦力構成になっている。例えば投手陣。最年長が西勇の32歳。中堅のような年だが、このチームではベテランになる。逆に若いのが西純の21歳。若いスタッフの象徴的存在といえる。

65歳と21歳…。その差は40。極端にいえばおじいちゃんと孫でもおかしくない年齢差なのだが、岡田はこれを楽しんでいる。2003年、星野体制での優勝時、ベテラン投手は多くいた。井川は別だが、伊良部、下柳、藪、ムーアなどが主力であった。

それを変革しようと2005年、岡田の第1次体制では若返りに着手。伊良部、藪はいなくなり、改革に成功。だが今年ほどの若いスタッフではなかった。

先発投手陣をみてみる。現在の予想では、青柳、西勇、岩貞、伊藤将、才木、西純の6人で回すことになる。右投手が4人、左投手が2人。まずは岡田が描くローテーションは確立。その中で岡田が最も熱い視線を送るのが才木と西純の2投手である。

「まだまだ安定した力がないから、不安だという関係者もいる。でもな、若さという武器は、そんな不安を一掃してくれるとオレは信じている。キャンプで、若いヤツらがバンバン目立てば、チームはガラリと変わる。チームの勢いというのかな。ルーキーや若い選手はホンマ、刺激剤になるんよ」。

1年は長い。ワンシーズン、固定したスタッフで戦うことはほぼ不可能である。その都度、修正を試み、危機管理の準備を用意しておかねばならない。だから岡田はキャンプで2軍も視察する。同じ沖縄でキャンプする1軍と2軍。この条件的メリットを最大限に生かす。2軍にもイキのいい投手陣がいる。それを岡田は自分の目で確かめ、頭にインプットして、必要な時に対応策を繰り出す。

岡田自身、この先、何年も監督を続けるつもりはない。今シーズンをまず集大成と位置付け、この先、次の監督への橋渡しを考えている。2年になるのか3年になるのか。成績次第だし、体力的な面もあるが、必ず残しておきたいものがある。その象徴が若き投手陣の構築であり、それが自分の責務と考えている。

前監督、矢野が残した下地を引き継ぎ、そこに岡田色を加える。クローザー候補の湯浅、セットアッパーの浜地はその代表例だが、とにかく才木、西純を大きくジャンプアップさせれば、この先は強固な投手陣になるのは目に見えている。

「これを見てみい。ブカブカになってな。ベルトの穴をきつく締めないとずれてくるんや」。ユルユルのウエストになったズボンを笑いながら上げる岡田。キャンプで動き、キャンプで考え、岡田自身の体は絞れた。絞れたと同時に、思考も研ぎ澄まされてきた。「何とかな。若いピッチャーを一人前にしないと…。そういう人材が多くいるというのは、楽しみでしかないわ」。手ごたえは、この話しっぷりで伝わってくる。

実生活では孫が2人。おじいさんは孫の話になると目を細めるが、グラウンドでも同じだ。孫のような投手に注ぐ視線は熱い。最年長監督は強い阪神を長く保つために、65歳のキャリアを生かしていく。【内匠宏幸】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「岡田の野球よ」)

体幹トレーニングで苦しむミエセスを見て笑顔を見せる岡田監督(奥)らナイン(撮影・上山淳一)
体幹トレーニングで苦しむミエセスを見て笑顔を見せる岡田監督(奥)らナイン(撮影・上山淳一)