<教育リーグ:DeNA4-0日本ハム>◇16日◇横須賀

田村藤夫氏(62)が、昨年DeNAのドラフト1位右腕・入江大生投手(23=明大)の力強いストレートと、打者に見極められてしまう変化球をじっくり観察した。

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昨年8月に右ひじを手術している。即戦力として期待された昨年は、肘痛もあり、思うようなシーズンを送れなかったはずだ。今季の巻き返しが、ピッチングに表れているか、注目して見た。

1イニングだけだったが、最速152キロだった。投げ方にもまったく違和感はない。手術した影響は真っすぐの威力を見る限りでは心配ないと感じた。今のプロ球界では150キロオーバーはそれほどの驚きはないかもしれないが、やはり150キロを出せることはすごいことだ。それだけでは1軍では通用しないが、頼れる変化球があれば150キロのストレートは十分に武器になる。入江にもそう感じさせるだけの球質と迫力があった。

打者5人に対して、ストレートではストライクは取れる。空振りも2回奪っている。この日の変化球の質が良くなかったことを考えれば、打者は変化球を見極め、ストレート待ちの中で対応してきたはずだ。その中で、力負けしなかったことは、今後への自信につなげてほしい部分だった。

変化球に目を移すと、象徴的な場面があった。最初の打者に対して、ストレートを2球続けてストライクを奪いカウント0-2と追い込んだ。ここから2球続けてフォークを投げるが、いずれもバッターは手を出してくれない。追い込まれている打者が、フォークを続けて反応がないというのは、入江からすればだいぶショックだったのではないだろうか。

おそらく、ストレートで追い込みフォークで勝負というのが入江のパターンだと想像できる。ストレートの威力に手応えがあるのだから、追い込んでからフォークで打者が反応してくれないようでは、ストレートも生きてこなくなる。入江のパターンが機能しないということだ。

打者はしっかり見極めている印象を受けた。おそらく、打者の目線からすると入江のフォークは落ち始めるのが早くて見切られてしまっているのか、完全なワンバウンドとなっているから判断しやすくなっているか、ストレートとフォークでは腕の振りに若干の差が出てしまっているか、この数通りが考えられる。

フォークに反応しない打者を見て、入江もなんでだろうと感じたはずだ。結局、最後は2-2から外角を狙ったストレートが少し浮いたものの空振り三振。ただ、見方を変えると、フォークは見切られているのだから、打者はストレート待ちのところへ、ストレートを投げ込んで空振りを奪えている。やはりストレートは力があると言える。

入江にはスライダー、カーブもあるが、この日のピッチングではことごとく変化球でカウントが取れなかった。四球でピンチを招き2死一、二塁から最後はボール球のスライダーを振ってくれて三振を奪ったものの、変化球の精度はいずれもいまひとつだった。

入江のピッチングは力のあるストレートと、そのストレートと対になるフォークが勝負球という組み立てになるだろう。そこに、カウント球としてスライダーの質を上げていけば、入江が描くピッチングの形はできてくると感じる。

さらに言えばクイックがまだ遅い。ストレートを投げて1・28~1・33秒では時間がかかりすぎだ。1・23秒を目安にさらに練習を積んでもらいたい。

大卒2年目というのは、もうまったなしだろう。昨年、手術に踏み切った時にも相当な苦悩があったのだろうと感じる。それだけに、今年が本当の意味でのルーキーだという強い覚悟でアピールしてほしい。

ピッチングの屋台骨を支えるストレートという武器はある。その武器をさらに強力なものにするために、フォークの軌道を磨き、スライダーの精度を上げることだ。これを2軍でどんどん試し、入江らしいピッチングで1軍に再チャレンジできるよう、しっかり目的意識をもって励んでほしい。(日刊スポーツ評論家)