<イースタン・リーグ:日本ハム7-6ヤクルト>◇3日◇鎌ケ谷
日本ハムの高卒5年目・田宮裕涼(ゆあ)捕手(23=成田)のセカンドスローをじっくり見た。
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捕手の基本スキルについては、既にご存じの方もいるとは思うが、あらためて簡単にご説明したい。
キャッチング、ブロッキング、スローイング、そしてリードがある。さらに私はピッチャーとのコミュニケーションは必須であると、常々このリポートの中でも触れてきた。
田宮は捕手としては異例とも言える俊足の持ち主で、バッティングもいい。ゆえに外野手としても出場機会を増やしている。肩も強く、特長を備えた有望な選手と言える。
私は日本ハムの高卒捕手として、田宮と同じプロセスを経験しているだけに、心のどこかで捕手として1軍昇格、そしてレギュラー争いをする姿を見たくなるのだが、それは個人的な見解としてとどめておく。
捕手としてチャンスを広げていくためには、何よりもキャッチングが大切だ。この日のキャッチングは、しっかり低めのボールも受けていた。ミットが流れず、しっかりしたキャッチングだった。
では、スローイングはどうか。初回無死一塁。走者山崎。2番打者のカウントは1-0から先発左腕根本の2球目は低めのスライダー。走者が左投手に対して盗塁を企画する際、投球動作に入った瞬間にスタートを切ると、盗塁成功の確率は高くなる。
根本もクイックで阻止しようとしていたが、私の計測では1・35秒。それほど速くない。そして、低めのスライダーを受けてからのセカンドスローは、難易度は高い部類に入る。
田宮も懸命に投げたが、送球はベースの真上へ高く抜けた。捕球してからショートが捕球するまでのタイムは2・04秒。2秒を切れば合格という中で、わずかにタイムがかかった。それ以上に、ベース真上に高く浮き、これでアウトにするにはノーチャンスだった。
送球が高く抜けた要因は、低めのボールを受けセカンドスローに移行する時、ミットを上に持っていく作業に入るが、ミットを上げる動きに伴い上体も浮き上がると、送球も高く抜けてしまう。
これを克服するには、しっかり体勢を立て直すこと。下半身で粘って、ミットは上げるが、上体は低く、ボールをしっかり低めに制球する体の使い方が必要になる。
この日は2度盗塁を企画された。2度目は左腕宮西とのバッテリーで迎えた7回2死一塁。得点は5-1で4点リード。走者は俊足の岩田。状況から走ってくるケースだった。カウント1-2からの4球目は真っすぐ。田宮が捕球→セカンドスロー→ショート捕球まで1・91秒だった。
ショートが中腰で捕球して、そのままタッチに行ける理想的な送球。しかし、岩田の俊足も素晴らしく、判定はアウトも非常に際どかった。スライディングも良く、セーフと言われてもおかしくないほど、ギリギリでの盗塁刺だった。
そして、私の計測1・91秒でやや反省がある。田宮が捕球してストップウオッチを押し、ショートが捕球した瞬間に止めたはずも、やや押すのが速かったかもしれない。
私はコーチ時代、捕手の真後ろに立ってタイムを計っていた。時にはマウンドで計測することもあった。そして、今はバックネット裏での計測だ。これは言い訳になるのだが、ショートやセカンドが二塁で捕球する瞬間が、コーチ時代よりも少し遠くに感じる。
目で確認しながらストップウオッチを押すのだが、そこは捕手目線での心理がもしかすると働いているのかもしれない。無意識のうちに「速く、速く」と心の奥底で思っているのかもしれない。まあ、仮にそうであれば、まだまだ私も修業が足りない。
1・91というタイムにちょっと驚き、「ちょっと押すのが速かったかな」と感じた。これも感覚的な話で恐縮だが、速かった分を差し引くと1・95くらいが妥当だったかもしれない。
盗塁を刺すのは、捕手だけの力量ではどうすることもできない。ファームを熱心にチェックしているファンの方ならあえて言うまでもないと思うが、ピッチャーのクイックは必須。それも質の高いクイックでなければ、俊足ランナーを刺すのは難しい。
さらに先述したように、左腕であれば、いいスタートを切られるとさらに刺すのは厳しくなる。
こうした条件を踏まえて、私はコーチ時代には捕手にこう指導してきた。「ピッチャーとの共同作業で盗塁阻止に臨み、捕手としては送球が高く抜ける、左方向へひっかける、ワンバウンド送球にならないよう、しっかりベース板に投げる。この基本を大切に、そのあとのアウト、セーフは考えずに、やれることを正確に実践しよう」。
ちなみに、初回の山崎も、7回の岩田も、どちらもいいスタートだった。
左腕とのバッテリーで、いい走者のいいスタートに対して、田宮がどういう送球を投げきるか。これが重要だ。低めのスライダーを受けてから、正確に投げ俊足走者を刺せば、これは大きな自信になる。
岩田の俊足とスピーディーなスライディングに対して、間一髪でアウトにしたことも自信にしてほしい。
私としては、二塁到達時の正確な計測を心掛け、これからも若くて1軍昇格へ必死な捕手の、何とかして盗塁を刺そうとトライするプレーを、なるべくわかりやすく皆さんにお伝えしたい。(日刊スポーツ評論家)





