【170】<ファームリポート・教育リーグ:DeNA2-3巨人>◇5日◇横須賀


ここまで新戦力として大健闘しているDeNAのドラフト4位、大卒ルーキー石上泰輝内野手(22=東洋大)だが、教育リーグ巨人戦で見えた攻守での細かい改善点をリポートする。

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沖縄のキャンプ取材から戻り、まだまだ真冬の寒さが残る関東で、教育リーグを見た。DeNAの石上をはじめてみたが、いいスイングをしている。オープン戦も好調をキープしており、この日はショートに入っていた。

まず、DeNAのショートは競争が激しい。この時期、大卒ルーキーがショートに入るのは、首脳陣がそこまでの期待をしているからで、本人も十分に自覚していると思う。大きなチャンスだ。

私はシートノック、イニング間の練習など、グラウンドから得られる情報はすべてしっかり見たいと思っているが、石上の練習姿勢、準備などはよくできていると感じる。試合の中でもセカンドベースへバックアップなど意識も高く、足もよく動いていた。

緊張感もあり、一方で疲れが出やすいころ。ことさらに目についた悪いところを指摘する意図はないが、見過ごせない場面が散見された。3番ショートに入っての第1打席。マウンドは巨人の左腕メンデスだった。初球外角真っすぐを見逃して0-1。

2球目、外角スライダーをひっかけて一塁線際のボテボテのゴロ。結果は一塁が捕ってそのままベースを踏んだ平凡な一ゴロだった。石上は走らなかった。私は経験者だけに、一塁線ギリギリのゴロで、石上はファウルと思ったのだろうと感じた。ルーキーの石上が走らなかった理由はそれ以外にない。

そこを踏まえて、ここは厳しく言えば、一塁際ギリギリだろうが、まず走る。ファウルで走っても問題はないが、フェアで走っていなければボーンヘッドになる。このケース、石上が最初から全力で走ってもアウトには変わらない。

でも、走らなければ。もう石上は重々分かっているだろう。オープン戦で結果を出し、試合経験を積ませるために教育リーグでも試合出場を続けている。1軍と教育リーグでは雰囲気も違う。しかし、見てる側からすれば緊張感が足りないと思われては、石上にとってこの上なくもったいない。

酷な言い方になるが、そういう目で見られるくらい、ここからの1軍レギュラー争いは厳しい。たとえ石上本人にそんな慢心はみじんもなくとも、誰がどう感じるか、それは石上にはコントロールできない。そんなところでリズムを崩してほしくない。

基本の基本を強調しておくが、打ったら走る。凡フライであろうが、一塁線、三塁線への際どいボテボテのゴロだろうが、まず走る。ファウルと判定されたら切り替えればいい。それは石上も体に染み込んでいることだ。

ここでもう1度、そのことを確認しておけばいい。これがオープン戦の終盤や、それこそレギュラーを勝ち取った後の公式戦であっては、見ているこちらもやり切れなくなる。

守備では0-0での4回表、1死二塁で、打者のショート正面のゴロ。石上は確実に捕球して一塁へ。しかし、送球は低投となりハーフバウンド。一塁手が処理して事なきを得たが、それたら二塁走者が生還していた可能性がある。打ち取った平凡なゴロを悪送球として先制点を与えては、ここも大きなミスとなる。際どいプレーだった。

7回表、2死一塁。代走が打者丸の時にスタート。石上はすぐに二塁ベースに入ったが、送球がショートバウンドとなり捕れずに盗塁成功となった。私はこの時、石上が打者丸をまったく見ずに二塁に入ったところが気にかかった。

結果、丸は見逃しているが、仮に遊ゴロだった時、石上の体勢はベース方向に流れており、逆を突かれる格好となってヒットになる可能性をはらんでいた。そういうことも起こり得るのが野球だ。

ここでは目で追うだけでいい。体はベース方向に流れたとしても、目で丸の動きを追っていれば、反応はやや遅れても、処理できる可能性がある。打者を警戒することの大切さを、石上はよく理解して、これを次に生かしてほしい。

ここまでよく1軍に食らいついているし、ショートでレギュラー争いに食い込んでくるとすれば、石上には大チャンスになる。結果を出すことで精いっぱいなのも良く分かる。一方で、こうした小さなミスをして、その背景をよく振り返り、自分でも考えて、同じシーンで迷わないようにしておくことだ。

不思議なもので、同じケースはまま繰り返されるもの。その時に同じ轍(てつ)を踏まないことが本当に大切で、そのための貴重な予行演習と思えばいい。

まだまだ気は抜けないし、この緊張感はオフまで続くだろう。張り詰めた中で試合に出られる喜びを実感する余裕はないだろう。粘り強く、1軍で生き残るためのミスとして、生かしてほしい。(日刊スポーツ評論家)