作新学院は夏の栃木大会で9連覇を達成した。なぜこんなに夏の作新は強いのか。小針崇宏監督(36)の指導方法に迫った。

技術は体が覚える。甲子園優勝のためにはどういうところが足りないのか。この点を理解して練習するのと、理解しないのでは、一生懸命やっても成果が違うという。小針監督は本から得た教訓を明かした。<1>日本一の富士山を登る<2>栃木県の男体山を登る<3>近所の山を登る。「人間の1歩はそんな変わらない。同じ1歩」。何が違うのか。

「準備と覚悟が違う」という。

近所の山なら今からすぐ行ける。栃木県の山だったら水分をもって行けばいい。ただ、富士山に登るには命がけ、準備には何カ月もかかる。道、降り方、気候、頂上の温度などの調べも必要。1歩間違えれば死ぬ。「そういう覚悟、日々の準備が違う。そういうのが野球も一緒」。1歩進む距離は同じ。考え方、準備の仕方、日数は違う。「1年目は栃木一の山、2年目は関東一の山、3年目は日本一の山」。長期計画の必要性を説く。「野球なんて全然教えていない」と言い切る。準備と覚悟を備え、自ら考える選手を育てることが、強さにつながるからだ。

記者の名(佐藤勝亮)に「勝」がある。「勝だ。勝ち運をもらおうかな」と大会期間中、名刺を見える場所に置いて戦った事を後で聞かされた。勝てるためにできることは全てやるのが小針監督流儀だ。

「もっと熱いぞ。甲子園は」。

甲子園の話になると、小針監督は晴れやかな笑顔になる。全国優勝した98回大会のメンバーも、今年と同じく春は県大会ベスト8止まりだった。昨年の1回戦敗退の悔しさをナインが晴らし、日本で一番多く、校歌を笑顔で歌えますように。【栃木県高校野球担当=佐藤勝亮】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)