全日本大学野球選手権が7日、神宮と東京ドームで開幕した。28年ぶり6度目の出場で頂点に挑む関学大硬式野球部マネジャーの川俣京香さん(4年=東筑)は、創部122年で同部初の女性主務を務める。東筑では17年にマネジャーとして夏の甲子園出場。大学野球の舞台でも全国の切符を手にした“勝利の女神”が、選手たちの活躍を願った。

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関学大の快挙は、川俣さん抜きにはありえなかった。創部122年で初の女性主務。東筑で17年にマネジャーとして夏の甲子園に出場し、記録員としてベンチ入りした“勝利の女神”が、またも全国出場を引き寄せた。「私、スポーツに関してはずっと運があったんです。リーグ戦も負ける気がしなかった」と頼もしく笑った。

主務は監督、選手とのやりとりだけでなく、リーグを運営する連盟やマスコミなど幅広い相手と接するなど、仕事も多い。部の事務仕事の責任を負う、いわば“裏方の主将”。同学年のマネジャーは4人全員が女性で、新チームがスタートした昨年10月にも「1つ下の男子マネジャーを主務にするか」という議論が起こった。ただ、川俣さんの信頼は厚く、本荘雅章監督(50)からも太鼓判を押され女性主務が誕生した。

主務の仕事は「本当に責任が重い」と語る。特に、コロナ対策には苦労した。1、2月は「20人以内で1時間まで」と大学から制限を受け、思うように活動できない日々。2月は1カ月間大学に通い詰め、「会食禁止」「練習中は間隔を2メートル空ける」「手洗いうがいの徹底」などガイドラインを作成し、大学と交渉を続けた。「なんとかみんなに通常に近い形で練習してもらえるように、という一心でした」。258人の部員に浸透させるため、何度もオンラインでミーティングを実施。4月にようやく、40人までの練習を3時間まで認められ、リーグ戦を戦うAチームはグラウンドにそろうことができた。杉園大樹主将(4年=明豊)も「本当に頑張ってくれました」と感謝。川俣さんの奔走は、13年秋以来のリーグ制覇に欠かせなかった。

「甲子園に出て神宮にも出たら、かっこよくないですか?」

1年前、1学年上の先輩と杉園主将との会話の中で“勢い”で出た言葉を、有言実行させた。杉園主将は「普通そんなこと言えない(笑い)。肝っ玉が強いですよね」と笑う。強い精神力で、28年ぶりの全日本大学野球選手権でもチームを支える。

「まだ、Bチームの選手たちは思うように練習ができていないですし、選手たちにはなかなか環境を整えてあげることができなかったですけど、神宮で優勝できたらさらにやってきて良かったと思えると思うので。優勝したいです」

8日午前9時開始予定の松山大との初戦(神宮)には、記録員としてベンチ入りする。強運で、肝っ玉の女性主務の存在は、関学大にとって大きな“戦力”になるはずだ。【中野椋】