「打倒巨人」を目指す指揮官・矢野燿大はこのキャンプで時折、敵の象徴であるオレンジ色のサングラスを着用する。この日も使っていた。そこを意識したはずはないだろうが楽天監督・石井一久は2人の巨人出身投手を投げさせてきた。先発の高田萌生、そして3番手・池田駿である。ともに昨年、トレードで巨人から楽天に移籍してきた。

興味深かったのは池田だ。熱心な虎党ならご存じだろうが巨人時代の19年5月29日、高山俊にサヨナラ満塁本塁打を浴びた左腕だ。この日は4回無死二、三塁のピンチで高山と対戦。そのリベンジとばかり? 二飛に打ち取った。それでホッとしたのかどうかは知らないけれど次打者の原口文仁には一時は逆転となる適時打を許していた。

時代が変わっても野球好き、特に虎党なら巨人はやっぱり気になる存在だと思う。我々メディアの目線も同じだ。パ・リーグ制覇を狙う楽天に元G戦士がどれだけの戦力になるかは1つの注目点かもしれない。

阪神にも巨人出身者がいる。このキャンプで張り切っているので既におなじみになっている山本泰寛だ。この日も8番遊撃でスタメン出場。3回にいい二塁打はあったが二塁走者のときに遊ゴロで三塁に走って刺されるプレーもあった。まだ成長過程だろう。

昨オフ、巨人から金銭トレードでやってきた。前述した楽天の2人は交換トレードだったが山本は「金銭」である。金銭トレードにもいろいろなケースはあるが、今回の場合、巨人では出番が来ないという判断によるものだろう。

慶大出身で巨人の前監督・高橋由伸によく起用されていたイメージだが試合数のキャリアハイは指揮官が原辰徳に代わった19年の92試合だ。しかし昨年は1軍出場がなかった。

「オレもトレードで人生変わったからね」。常々、トレード、移籍についてそう話すのは他でもない矢野である。大阪・平野区の出身だが東北福祉大を経て、プロのスタートは中日だった。そこから阪神に移籍し、一流選手の仲間入りをしている。

交換、金銭の違いはあれ移籍は移籍。生え抜き選手は自然に期待されるし、目立つ。それでも山本が二遊間を守る選手たちに刺激を与え、さらに、それ以上の力になれば面白い。特に巨人戦で暴れる場面が来るのなら、これは痛快だ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対楽天 3回裏阪神1死二塁、二塁走者山本は、三塁を狙うもアウトとなる(撮影・菅敏)
阪神対楽天 3回裏阪神1死二塁、二塁走者山本は、三塁を狙うもアウトとなる(撮影・菅敏)