投げやりに言うのを許してもらえれば「なんなら完全試合されてたらどうや」という感じだ。打線の湿りっぷりがひどい。もちろん青柳晃洋が打線に助けられる試合だってあるだろうが、今季9度目の0封負けでもあるし、この日に限っては青柳に、なんでも言うこと聞きます、佐藤輝明の登場曲ではないが「なんでも言っちゃって」という感じだろう。

9回表阪神1死、ネクストバッターズサークルの青柳(左)とベンチの矢野監督(撮影・森本幸一)
9回表阪神1死、ネクストバッターズサークルの青柳(左)とベンチの矢野監督(撮影・森本幸一)

大野雄大の投球は見事だった。それは間違いない。完全試合の文字がチラついた。つい先日、ロッテ佐々木朗希がオリックス相手に達成したばかりなのに今度は阪神なのか。大野雄の前には19年に無安打無得点を喫しているし…。いろいろなことを考えながらドキドキしていた。

しかし終わってみればまるで気配のない打線をバックに孤軍奮闘のエース青柳が延長10回に力尽きたという構図だ。少なくとも阪神サイドからすれば。打たれた後、厳しい表情でベンチの奥に下がった右腕の様子が象徴的だった。

快打が出ないのは仕方がない。しかし何と言えばいいのか、難敵・大野雄を前になんとかしようという様子が感じられなかった。例えば近本光司はバントの構えをして揺さぶったりしていたが中途半端にも思う。やればいいではないか。大リーグならあの流れでバント安打を狙えばブーイングの嵐かもしれないが、ダントツ最下位の阪神が気取っている場合かと思う。

8回表阪神2死、山本は一直に倒れる。投手大野雄(撮影・前岡正明)
8回表阪神2死、山本は一直に倒れる。投手大野雄(撮影・前岡正明)

その中で目を引いたのは6番二塁でスタメンの山本泰寛だ。8回2死から「甘い球が来るまでなんとか…」という様子でファウルで粘った。それが奏功したのか8球目は鋭い当たりの一塁ライナー。安打にこそならなかったがこれが強敵に挑んでいくプロの姿勢だろうと感じた。

前回4月28日、甲子園での対戦では大野雄から3得点し、阪神が勝っている。そのうち1打点は山本がマークしたもの。あとの2打点は糸井嘉男と坂本誠志郎だった。

「なんなら完全試合されていても…」と自暴自棄に書いたが、そうではないと思い直すのは唯一の安打をマークしたのが佐藤輝だった点だ。これは今後に生きる。「阪神の主砲はオレ」と自信を持てるはずだ。

「(青柳を)負けさせたベンチ、打線の責任やと思っています」。指揮官・矢野燿大はそう振り返った。それは正解だ。猛省して名古屋の残り2試合、必死で向かっていくしかない。(敬称略)

10回表阪神2死、佐藤輝は中堅へ二塁打を放つ。投手大野雄(撮影・前岡正明)
10回表阪神2死、佐藤輝は中堅へ二塁打を放つ。投手大野雄(撮影・前岡正明)