リーグ戦再開試合で阪神は“2位タイ”になった。セ・リーグ失策数の話である。今季は巨人に守乱が目立ち、43個でダントツのワーストだ。早い段階で阪神は実はもっとも少ないと書いたが少しずつ増え、この日で32失策。広島と並んで2位になった。

終わってみれば快勝だったが最初はどうなるかと思った試合だ。1回1死からエース青柳晃洋が死球で走者を出した直後。3番・佐野恵太の二塁へのゴロを山本泰寛が大きくはじいてしまう。これで1死一、三塁とピンチが広がった。

結局、牧秀悟の犠飛による1失点でしのいだものの、正直、粘れる青柳でなければどうなっていたかと思う。本塁打や適時打なしで失点するのはチームにとってイヤな感じである。

この山本の失策が阪神の今季32個目。山本はその裏、好機で貴重な2点適時二塁打を放った。勝利に貢献する仕事だったが守備と打撃は別だ。心情的にはともかく「帳消し」はプロの世界にはないはずだ。

「失策もついてるけど難しい打球だし、軽率にいったプレーではないので責められない」。指揮官・矢野燿大はそう話したようだ。起用した選手をかばった形だが、リーグ戦再開の立ち上がりには大きな意味がある。それを思えば、山本レベルの経験を持つ選手ならば、せめて前に落として止めてほしい気はした。

なによりファームにも虎視眈々(たんたん)と1軍昇格を狙っている選手は数多くいるのだ。こういうところでスキを見せるのはよくない。さらに言えば、ようやくエンジンがかかってきた阪神、これからの試合はこれまでと“値打ち”が違ってくる。

目の前に迫ったAクラス入り、さらに上位との直接対決となれば緊張感は増してくる。そこでミスが出て試合に影響するのは絶対に避けなければならない。だからこそ、勝ち試合でのミスはしっかりチェックしてほしいと思う。

それにしても阪神はツイているのか、そうでないのか。この日、今永昇太が先発してきたことで今季に完全試合、無安打無得点を記録した3投手とすべて対戦した。5月27日ロッテ戦の佐々木朗希、8日ソフトバンク戦の東浜巨、そしてこの日の今永だ。その結果は2勝1敗と勝ち越した。意味も根拠もあるわけではないが、今後に向け、なんとなく勢いの出る結果のような気はする。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対DeNA 1回裏阪神2死一、二塁、山本は左越え2点適時二塁打を放つ(撮影・加藤哉)
阪神対DeNA 1回裏阪神2死一、二塁、山本は左越え2点適時二塁打を放つ(撮影・加藤哉)