例えば神戸でのロッテ戦が雨で流れたオリックス・ファンがこの試合を見ていたらどう思っただろう。

3冠王を狙うヤクルト村上宗隆に1発が出た。8回にはこれも看板選手・山田哲人にアーチ。一方、阪神も悩める主砲・佐藤輝明に久々の本塁打だ。打たれた両軍の先発左腕もかなりの好投。野球として結構、楽しめた内容ではなかったか。

虎党も負けたとはいえ、そういうふうに思いたいところ。だが泥沼の連敗中では無理なのだ。開幕9連敗以来の8連敗はなんとも苦しい。もちろん大きく影響しているのはコロナ禍だ。現状は1、3、5番が不在。「ファンのみなさんと一緒に奇跡を起こす」とイメージを広げていた指揮官・矢野燿大もこれは痛い。

そうは言っても矢野も繰り返すように試合は待ってくれない。なんとかしてくれ。そんな思いで試合を見ているが結果が出ない。この敗戦で、またしても感じてしまったのは打線のつながりのなさだ。

前日は9回、4連打に相手のミスも絡んで2点をあげたが連敗中の得点のほとんどは本塁打によるもの。この日も6回に出た佐藤輝の2ランだけ。これでは押せ押せムードが出てこない。投手陣はなんとか踏ん張る試合が多いだけに、ずっと打線が課題だ。

そんなことは、当然、首脳陣も分かっている。だからスタメンをいじるのだ。前日に途中交代させたロドリゲスに代え、原口文仁。木浪聖也に代え、植田海を先発で使ってきた。なんとか打開策を…ということだろうがうまくいかない。

そこで思うのは植田を起用するとして8番で意味があるのか、ということだ。植田が出塁すれば投手の打順で送って上位につないで…ということだろう。しかしそれも消極的ではないか。失礼ながらギャンブルで植田を起用するのなら上位でないと俊足を生かす気配が出てこない。

ずっと書いているが問題は島田海吏の次から足を使えない打者が続くということだろう。だから選手任せ、結果を待つ“受けの形”に見えてしまうのだ。

3回に無死から内野安打で出た島田を犠打で進めたが、ここは思い切って盗塁で仕掛けてほしかった。「負けが込んでいるときは手堅く」と言われるが、そういうときに限って、うまくいかないもの。今こそ思い切った策を打つ勇気が必要だろう。「超積極的野球」が完全に影を潜めている。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

ヤクルト対阪神 3回表阪神2死満塁、遊飛に倒れ悔しがる佐藤輝(撮影・鈴木みどり)
ヤクルト対阪神 3回表阪神2死満塁、遊飛に倒れ悔しがる佐藤輝(撮影・鈴木みどり)
ヤクルト対阪神 ヤクルトに敗れて8連敗となり、引き揚げる阪神矢野監督(撮影・加藤哉)
ヤクルト対阪神 ヤクルトに敗れて8連敗となり、引き揚げる阪神矢野監督(撮影・加藤哉)