宜野座キャンプは初めての雨。これを利用して、前日に続き、室内でサインプレーの練習が行われた。前日は「サインだけ先にできあがってて、呼吸が合えへん、人間同士があえへん」と文句を言った指揮官・岡田彰布。この日は「いやいや、きょうはよかったよ。全員でできたしなあ」と満足した様子だ。
「守りの野球」を掲げる岡田にすれば失策数を減らすことはもちろん、サインによる連係プレーをしっかりこなすのはポイント。こういうものをピシッと決められるチームなら特に意識せずともディフェンスのムードは高まっていくはず。
それにしても失策数が毎年の課題になる阪神。岡田体制になり、新たに内野守備コーチとして馬場敏史が招かれた。「阪神はまったく知らん。心配やね」と決定当初は話していたものの年も明け、キャンプも始まって「いろいろなチームでやってきたからね」と笑顔を見せるなど、雰囲気はつかめてきたようだ。
シーズンに突入すれば、また違ってくるだろうが、まずは阪神のムードに溶け込んだようである。その馬場に聞きたいことがあった。率直に言って阪神の守備陣はうまくないのか? ということだ。その問いに馬場はこう答えた。
「そんなことはないですよ。練習を見ていても、そんな風には感じない。大事なのは試合。そこでキッチリやれるか、どうか。“ここ”の問題ですよ」
そう言いながら馬場は自分の胸をドンとたたいた。すでに阪神の人間になっているので、額面通り受け取るのもどうかとは思うが現段階で守備のレベルは拙くないということだ。
練習でできるが試合ではできない…。では、どうすればいいのか。当然、起こる次の疑問。その答えが馬場は面白い。「そりゃ、練習することでしょ」-。
「練習から『拙い』と監督を含めた周囲に思わせないことですよ。練習で変なところを見せたら、やっぱり『あいつは…』となるでしょ。だから、そういう姿を見せないことです」
禅問答のようにも聞こえるが「試合で失敗しないように練習から完璧にする」ということだ。当然かもしれない。一般的に「試合でできる」のに「練習でやれない」ことは、まず、ない。その反対はある。だから「試合のつもりで練習しろ」ということだ。大事なのは緊張感。岡田阪神の力点だろう。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)