ツキもあるし、ホンマにいってまうんちゃうか-。連日似たような書き出しで申し訳ないけれど、そんな思いすら浮かんでしまう連勝だ。先制されても逆転されても勝つ。確かにこれは乗っている。

この逆転勝利をナインの中で喜ぶというよりもホッとしているのは西純矢ではないか。1点リードの7回に2番手で登板。1番・山崎晃大朗を投ゴロに切ったものの続くサンタナ、山田哲人に連続四球で降板。その後、阪神は一時逆転を許してしまうのだ。

阪神が最後に負けたのは19日広島戦(甲子園)だ。その試合、西純は1点ビハインドの7回に登板。8回に1失点している。指揮官・岡田彰布がボヤいたのはその失点内容だった。

「野球観がないんよ」。先頭の松山竜平に四球を出したことを指摘。そのときは書かなかったが手厳しい表現をしていたのだ。あの場面、松山を出せば代走に俊足選手が出て盗塁され、追い込まれていく。安打は仕方ないが四球はダメ-。そんな思いの言葉だった。

少々、驚いたのはその翌日だ。20日試合前のグラウンドで岡田は西純に近づき、声をかけたのである。直立不動で話を聞いた西純は「『おい、問題児』と声をかけられて。野球観の話です」と明かしていた。

つまり岡田はこの場面で自身の、というかプロでいい仕事をするための「野球観」について、そのものズバリの単語を出して指導していたのだ。さすがに敗戦後のセリフとしてはきつすぎるか、と思って控えたが西純も明かしたので、ここで書いておく。

その西純を19日以来、しかも勝ちパターンで起用した。しかし結果は出なかった。その点について岡田はやはり厳しかった。「前回言うたことをそのままやってしもうたよな。代走が出る選手に四球出したら。投げるとこなくなってしまうよ。あんなことやってたら-」。

もちろん西純もそれは分かっていたはず。最初の山崎はフルカウントにしながらも耐えた。しかし続かない。頭で分かっていてもできない-。誰でも経験のあることだろう。西純は当然がっくりしているはず。それでも試合に負けなかったのは大きいのではないか。

勝負には厳しい岡田だ。だが同時に「育成」も頭にはあるはず。大事なのは若手が苦境を糧にできるかどうか、だ。そこに阪神の今後もかかっている。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

9回表阪神2死三塁、代走を告げる阪神岡田監督(撮影・藤尾明華)
9回表阪神2死三塁、代走を告げる阪神岡田監督(撮影・藤尾明華)
阪神対広島 練習の合間に岡田監督の話を聞く阪神西純(左)(撮影・藤尾明華)
阪神対広島 練習の合間に岡田監督の話を聞く阪神西純(左)(撮影・藤尾明華)