それにしてもおそろしい球団だ。「明日は大入りが出そうです。オープン戦としては初めてかも」。そんな話を営業関係者から聞いた。10日の巨人戦だ。甲子園では入場者が3万7000人を超えると「大入り」と表現し、関係者に「大入り袋」が出る。

プロ野球で入場者の「実数」が発表されるようになったのは05年。指揮官・岡田彰布の前政権時に優勝した年だが、そこからOP戦での大入りは実現していない。「おそらく、その前もないのでは」と関係者。これも日本一効果か。いずれにせよオープン戦ラストの甲子園である10日は4万人前後の虎党が詰めかけるということだ。

この日のヤクルト戦も3万162人が入った。他球団のカードでは公式戦でも相当な数字。12球団NO1という人気度は健在だ。その前で、しかし、阪神は8連敗。オープン戦としては史上初の記録更新だ。

そんな試合の中、「やっぱりうまい」と納得したことがあった。ノイジーの守備だ。右肘の不調で出遅れており「6番左翼」で出たこの日が実戦初の守備。その“見せ場”は5回だった。2番手のルーキー椎葉剛が対した3選手はすべて左翼にいい当たり。

「腕が振れてなかった。そら、ええ当たりされるよ」と指揮官・岡田彰布が評したその飛球をノイジーがことごとく背走し、ジャンプしながら捕球する場面も。まるで難しいノック練習のようだ。だが特にファインプレーという感じではない。普通と言えば普通だ。しかし「それが重要」と話したのは外野守備走塁コーチの筒井壮である。

筒井 あの当たりは彼なら捕れるだろうし、やれることをやっただけ。でも、それが大事なんです。安定感がある。守備、走塁は浮き沈みがあってはダメ。1軍で試合に出ようと思えばね。若い選手に学んでほしいのはそういうこと。

外野守備では前日に守備面で不安を見せた前川右京が4回、安打を捕れるように見せるフェイクプレーで三塁走者を刺す場面もあった。「あれも普通なんです。前川がやるべきことをちゃんとやったという結果でしょう」と筒井。

派手な場面を見たいのはお金を払って球場に行くファンなら当然。だが同時に「レベルの高い普通」を見せるのもプロだ。勝敗度外視の段階とはいえ、大観衆の前でしっかりした野球を見せてほしい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)