大学準硬式の交流大会「体育会ナビ 関東JUNKOオールスターIN伊豆」の開幕試合が25日、伊豆市・志太スタジアムで行われ、東都選抜Aが5-0で東都選抜Bに勝利した。この大会は関東地区連盟の学生委員が初めて企画運営する大会で、準硬式のレベル向上と知名度拡大が目的である。学生たちは「自分たちで考える野球」の楽しさとやりがいを発信し、高校球児の進路選択の1つに入れて欲しいと願っている。


夏の高校野球地方大会が始まろうとしている中、関東大学準硬式のオールスター戦が静岡で開幕した。東京6大学、東都(A・B)、神奈川、北関東、新関東の5つのリーグから6チームを編成し、リーグを越えた交流と、技術のレベルアップを目指す。夜には大手薬局チェーン店の人事担当者によるキャリアガイダンスが行われ、全150選手が就職活動の心得を学んだ。大人の役員の手を借りない、新しい交流大会がスタートした。


発案のきっかけは昨年12月。「コロナ禍で奪われた大学生活に、思い出を残そう」とい学生委員たちの熱い思いからだった。実行委員長の東京大・鈴木陸太さん(4年・東海)は「2020年に全日本選手権が中止になり、3年生以下は遠征もほぼできない中で野球をしてきた。リーグを越えた交流や、友達作りができないままでいます。大学生はいろいろな人と関わりを持てる年代なのに、それができず歯がゆい気持ちでした。この大会を通じて他チームと仲良くなって、人間的に成長して帰って欲しい。選抜チームを作ってレベルの高い戦いをして欲しいという狙いもありました」と意図を語る。


■高校生にも知って欲しい、準硬式野球のやりがい


多くのチームが監督不在で、練習場の確保や試合運営を学生主導で行うのが準硬式野球の特徴だ。選手を見ると、野球未経験者もいれば、2年前に埼玉西武ライオンズからドラフト指名された最速154キロ右腕・大曲錬投手(福岡大・西日本短大付)のような逸材もいる。女子選手の出場も可能で、9人が関東地区連盟に所属する。インクルーシブな考えを軸に、選手たちは4年をかけて自分を成長させていく。


この日の開幕試合では最速148キロ右腕の筑波大・橋本剛石(2年・市立浦和)がリリーフし2回を無安打に抑えた。高校時代は腰のケガに苦しみ、思うような結果が出なかったが、大学で自分の身体のメカニズムを追究し、目標の最速150キロまであと2キロというところまで成長した。「自分が晩成型だったかはわからないが、筑波大に入って驚くような球速変化が起きていて楽しいです。野球の満足度は100%。ケガに泣かされた選手ほど、準硬式をやってほしい」と話す。


鈴木委員長は「高3の今ごろを振り返ると、自分も野球のことで頭がいっぱいで引退後のことなど考えていなかった。でも、こういう大会を準硬式はやっているんだよ、ということを発信し知名度を広げていきたい。連盟ではSNS広報も積極的に頑張って、部員集めをしています。これからも学生にとって魅力のある大会を企画し、次代にもつなげていきたいですね」。


企画当初は希望でいっぱいだったが、4年生は就職活動との両立に悩み、スポンサー集めは目標額に届かず大苦戦した。そのたびに話し合いを行い、この日を迎えることができたという。やらされるのではなく、自分で考えるから苦労も楽しい。そんな準硬式野球を高校球児の進路選択の1つに入れて欲しいと学生たちは、願いながら発信を続ける。【樫本ゆき】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「いま、会いにゆきます」)

最速148キロ右腕・筑波大の橋本剛石(2年・市立浦和)が2回を無安打無失点の好投
最速148キロ右腕・筑波大の橋本剛石(2年・市立浦和)が2回を無安打無失点の好投
開幕試合では、東都1部から6部までの選抜選手がリーグの枠を超えて真剣に勝負した
開幕試合では、東都1部から6部までの選抜選手がリーグの枠を超えて真剣に勝負した