文武両道の古豪静岡が、半世紀ぶりに8強進出を果たした。1点を追う4回にプロ注目クリーンアップの一角、4番堀内謙伍捕手(3年)が同点適時打、5番安本竜二内野手(3年)が勝ち越し適時二塁打を放ち、木更津総合(千葉)を破った。8強は65年以来50年ぶり。

 50年前も打撃のチームだった。静岡が誇る主軸が地力を発揮し、半世紀ぶり8強進出を決めた。

 まずは4番堀内だ。4回2死二塁。1回戦で無安打だった男が、外角直球に反応し、左前に同点打を放った。前日はロングティーでスイング調整。「(1回戦は)引っ張って体が開いていたので、逆方向を意識するようにした」と修正した成果が出た。髪も短く刈り込んでいた。「気持ちで打った」とほっとしたようだった。

 5番安本も続く。出場選手中トップとなる、昨秋公式戦4本塁打で一躍注目を浴びた。「結果を出さないといろいろ言われる」とプレッシャーと闘ってきた。鋭いスイングもボールに当たらず空回りしていたが、この回追い込まれて「軽く当てよう」と開き直ったことが功を奏した。今大会自身初安打となる左中間を破る勝ち越し打。試合前に父誠さんから「練習は裏切らない」というメールが届き、勇気も湧いた。

 選抜は50年前の8強から4度目の出場だが、過去3大会は2回戦進出がやっとだった。夏も03年以来、勝利から遠ざかっている。古豪復活の要因の1つには、08年に「裁量枠」という静岡独自の公立入試制度が本格的に確立されたことも挙げられる。野球やサッカーなど各学校の特色に合わせて独自の基準を設定。中学の所在地にかかわらず、堀内や安本のように中学時代に実績のある選手が入りやすくなった。

 昨秋は中軸を中心に公式戦チーム打率4割1分9厘、12本塁打と今大会出場トップの打撃で勝ち上がった。堀内は「4、5番に安打が出て活気づく」とチームへの好影響を口にした。28年以来87年ぶり4強進出をかけて、次は敦賀気比戦に挑む。【加納慎也】