2年ぶりの日本一を目指す浦和学院(埼玉)が、県岐阜商・高橋純平投手(3年)に11安打を浴びせて、打ち勝った。7回に「恐怖の7番」荒木裕也外野手(3年)の先制適時打など、4安打で3得点。先発江口奨理投手(3年)が完封し、勝利。センバツ8連勝で、春夏通算30勝に到達した。今日30日は休養日になる。

 バットを指4本分短く持った「恐怖の7番」が、極限まで集中力を高めた。7回無死一、三塁。荒木は「どんなボールでも食らい付くだけ。上からつぶして、低い打球を打とうと思った」と言った。1ボール2ストライクから、127キロのスライダーを中前に運ぶ。さらにエース江口の犠飛、1番諏訪の適時打とたたみ掛け、4安打で一気に3点を奪った。

 最速152キロの高橋対策に、前日28日の練習では、ハイテク打撃マシンを取り寄せた。最初は165キロに設定したが、さすがに速すぎると、158キロ前後に落として振り込んだ。荒木は「マシンで160キロ近いボールに目を慣らしたので、あまり速く感じなかった」と言った。終盤右打者にスライダーが増えた配球も読み、決勝打につなげた。

 7番ながら、昨秋の関東大会でサイクル安打を達成したお祭り男。8回には再び高橋から中前適時打を放ち、3安打2打点で大会通算打率を5割に上げた。幼少時は五輪選手が練習する東京・北区の国立スポーツセンターで水泳を習い、クロールで北区優勝。勝負強さが際立ち、中学時代は女子から「裕也様」と呼ばれた人気者だった。森士監督(50)は「高橋君は連投の中で、いつもの球の走りがなかったと思う」と、攻略につなげた。

 初優勝した13年は、決勝で済美(愛媛)安楽智大投手(18=楽天)から12安打で9点を奪った。“大物打ち”は吉兆の予感。この日の試合前、宿舎からの移動バスで、映画「ロッキー」のテーマ曲を大音量でかけた。13年と同じルーティンで、選手のボルテージはアップ。さらにTUBEの「傷だらけのhero」と続き、一気に聖地に乗り込んだ。出陣の朝はいつも通り、力うどんを食べてスタミナアップ。伏兵と主軸が打ち、エースが完封。投打とも盤石の「ウラガク」に、あの春と同じにおいが漂ってきた。【前田祐輔】