函館地区予選が、全道10地区のトップを切って開幕した。開幕試合のCブロック1回戦は、女子部員の船尾春希(3年)が打撃投手でチームを支えた松前が、毎回の15安打を放って函館水産に8回コールド勝ち。15年夏勝利に一番乗りした。

 最強の“女神”に全国1番星をプレゼントだ。毎回の15安打を放ち、全国で最初に白星をつかんだ松前の岡田巧真三塁手(3年)は「チームにとって大きな存在。少しでも長く一緒に野球がやりたいから」と、記録員としてベンチ入りした船尾を思いやった。

 女子部員として普段は二塁を守る船尾だが、大会規定により公式戦には出られない。元全日本メンバーで、上原浩治(レッドソックス)や福留孝介(阪神)らとプレーした札幌大谷の船尾隆広監督(44)は叔父にあたり、野球の知識も豊富だ。大会前には打撃投手として1日1時間20分ほど、100球程度を投げてチームを支えた。そのかいあって、この試合では1点リードの8回に打線が爆発。幼なじみの岡田の適時三塁打など、5長短打で大量6点を奪い試合を決めた。

 船尾の始球式でスタートした開幕試合。打席には、チームメートの佐藤武留(たける)中堅手(3年)が立った。投球が高めに浮き「頭の方に来たので、びっくりした」と慌てて避けた佐藤だったが「みんな笑っていたし、あれで、力が抜けました」。1回、先頭打者で安打を放って、この日、2安打1打点と打線をけん引。女神のいたずらが、選手の気持ちを和らげた。

 前夜、手紙入りの手製のお守りを、選手全員に渡した。「負けたら終わりだから、1日1日を大切にしたい。今日はみんなと一緒に試合に出ている気分で、楽しかった」と船尾。勝利の女神は、誰よりも11年ぶりの南北海道大会出場を信じている。【中島宙恵】