2季ぶりの甲子園切符を目指す駒大苫小牧は、エース伊藤大海(3年)のピンチを打線が救い、札幌光星に7回コールドで初戦を突破した。

 1点差に迫られ迎えた5回2死一塁。今夏、初めて失点した駒大苫小牧のエース伊藤を励まそうと、マウンドに内野陣が集まった。輪の中で、安田大将(3年)が口を開く。「このピンチを抑えたら、俺が打ってやるから」。その裏の攻撃。宣言通りのアーチを右越えにかけた安田は、再び1点を返された直後の6回にも、右前適時打を放ってエースを援護。有言実行の4番に引っ張られるように、打線はこの回、2死走者なしから、5連打含む6長短打を集めて、札幌光星のエース本前を攻略した。

 どうしても、コールドでけりをつけたい理由があった。相手のコンパクトな打撃は、徐々に伊藤を捉えつつあった。さらに、6回の攻撃中、伊藤が右腕に死球を受けるアクシデントが発生。利き腕を押さえて、うずくまる背番号1の姿に、誰もが肝を冷やしただけに、この回に奪った大量6点の意味は大きかった。最悪の事態も考えていた安田は「(伊藤が)もしかしたら投げられないかもと思ったので、結果的にコールドで終わって良かった」と、ホッと一安心だ。

 今春の室蘭地区予選から続いていた絶対エースの連続無失点イニングは、45回で途切れた。しかし、それを補うかのように打線が爆発。伊藤は「前半から野手に助けられた」と感謝を忘れない。佐々木孝介監督(28)は「大海が死球を受けてから、野手が1つになったような気がした。この試合が、きっかけになるかも」と、1人でエースと主将の重責を担う伊藤のピンチが、チームの一体感を生んだとみている。

 夏は3年連続の8強入りとなった。準々決勝では、春の全道決勝で敗れた北海と激突する。「同じ相手に2度も負けられない」。安田がチームの思いを代弁した。【中島宙恵】

 ◆駒大苫小牧13年秋以降 13年秋に全道大会を制して、翌春9年ぶりにセンバツに出場した。当時2年の伊藤が創成館(長崎)を完封して初戦を突破、2回戦で履正社(大阪)に6-7サヨナラ負けした。14年は春、夏ともに道大会で初戦突破も、準々決勝で敗退。現3年が主力となった14年秋は4強、15年春は準優勝と道大会で上位に進出している。