東北勢の全国制覇はまたしてもならなかった。

 6回裏、劣勢をはね返しついに6ー6の同点に追いついた。スタンドの大歓声の後押しもあって、流れは完全に仙台育英にあった。

 佐々木順一朗監督は言う。

 「同点に追いついた時は神様が『勝っていいんだよ』と言っているような気がしました。場内の雰囲気も鳥肌が立つくらいでした」。

 しかし同点で迎えた9回表に思わぬ落とし穴が待っていた。東海大相模の9番打者・投手の小笠原に痛恨の一発を浴びた。

 「思い切り振り回しているんで指示を出せていれば」と悔やんだ。9回は両校とも9番からの攻撃とあり、佐々木監督は「10回が勝負だな」と試合展開を読んでいた。その矢先にまさかの決勝本塁打を許してしまった。

 「悔しいし、申し訳ないし、期待に応えられなかった」と佐々木監督。この本塁打で再び東海大相模に流れは傾きその後連打に失策も絡んで決定的な10点目を奪われた。

あと一歩のところで何故勝てないのか。

 「優勝したいと思い続けて40年。何であと1イニングで負けてしまうのか。これでまた闇の中に入ってしまった。何故なのか分かっていればやります。模索というかまたトンネルの中に入ってしまいましたね」。

 さらに言葉を続け「流れというか試合展開、相手にもよるでしょう。でも今年は大きなうねりの中にいるような気がしていたんです。流れが来ているのかなと。これまでも、大越の時(89年)に延長(帝京に0ー2)で負けたり、もう一つ引っ張ってやれば優勝できた。引っ張る力があるうちに何とか優勝したいですね」。

 閉会式で奥島高野連会長が言った。「東北勢の全国制覇は近い。そう思わせる準優勝でした」。誰もが同じことを感じ、高校野球100年目の夏が終わった。

【福田豊】(ニッカンスポーツ・コム/高校野球コラム「ふくださんの高校野球が好き」)