木更津総合(千葉)が逆転で優勝候補の大阪桐蔭を破り、昨秋の明治神宮大会で敗れた雪辱を果たした。エース早川隆久投手(3年)が5安打1失点、4回以降は1安打に抑えて2試合連続の完投勝利。71年以来45年ぶり、東日本勢では唯一の8強に勝ち上がった。

 最後の打者を空振り三振に仕留めた早川が、雄たけびを上げて左拳を振り上げた。昨秋の神宮大会で現チーム唯一の黒星をつけられた相手を1点に抑え、123球を投げ抜いた左腕は「大阪桐蔭にリベンジするために頑張ってきた。本当にうれしい」。最高の笑顔で、木更津総合名物の「全力校歌」を聖地に響かせた。

 1発で目覚めた。初回、3番吉沢に甘く入ったスライダーを左翼席に運ばれた。「あれで気を引き締められた」。前夜にバッテリー間で話し合った「低めの変化球に手を出してくる」という分析を思い出し、カーブとチェンジアップを多投。「この日のために取っておいた」という、この冬に習得したツーシームも織り交ぜて凡打の山を築いた。

 満身創痍(そうい)の経験が、大一番で実を結んだ。昨秋の対戦前、すでに早川の腰には疲労骨折の兆候があった。だが五島卓道監督(61)から「大阪桐蔭と戦う機会はめったにない。経験すれば今後が変わる」と先発を任された。痛み止めを飲んで登板も、6回途中7安打7四死球で4失点。「万全じゃなかったけど、レベルの差を感じた」。練習用の帽子のつばに「2-5 打倒大阪桐蔭」と書き込んだ。骨折が癒えた2月から「低めの制球」をテーマに投げた。すべては、この日のためだった。

 ルーティンも初めて変えた。普段は試合前に英ロックバンド・クイーンの曲で気持ちを高めるが、この日はE-girlsの「出航さ!」を選んだ。「大阪桐蔭にはクイーンで負けた。やってきたことに自信が持てる歌」。サビにある「小さい努力 その積み重ねやっと 実を結ぶかもね いざ出航さ」という歌詞を自分に重ね合わせた。「立ち上がりに低めに集まらなかったので、今日は80点。次はクイーンに戻します」。早川の春は、まだまだ終わらない。【鹿野雄太】