プロ注目の154キロ左腕、江陵の古谷優人(3年)が奪三振ショーで初の4強進出を決めた。北北海道大会の1試合個人最多奪三振記録を2個上回る20奪三振で完封した。3回2死からの8者連続三振は大会タイ記録だった。創部3年目のクラークが北大会では25年ぶり初陣4強など、北北海道のベスト4が出そろった。準決勝はあす20日に行われる。

 雨脚が激しく、ぬかるんだマウンドで江陵・古谷が投じた133球目。相手のバットが空を切った。20個目の三振で締め、雄たけびを上げた。大会最多記録を塗り替える快投で、スコアボードに0を並べた。3回に遊ゴロで2死後、釧路工打線はボールを前へ転がせない。6回1死までの8者連続三振は過去最多に並んだ。自己最多は昨夏の地区1回戦、延長15回にもつれた帯広農戦での18個。「チームのために投げただけなので、何とも思わない」。記録に名前を刻んでも、ただ勝って準決勝に進めることだけがうれしかった。

 前日17日に154キロをマークし、球場をどよめかせた翌日の登板。疲れも残り、この日最速は5回の149キロ止まりだった。「真っすぐの調子が良くない」と、スライダーを主体に組み立てた。空振り三振のほとんどを120キロ台のスライダーで奪った。「スライダーで押せたことが良かった」と、直球だけではない、自身の武器を再確認した。

 8回まで両チーム無得点だったが、仲間を信じて投げ続けた。9回、味方が待望の得点。「打ってくれると信じていた」と喜んだ。1-0となった1死一塁。援護にうれしさがあふれた次打者の古谷もファウル5球で粘り、左翼への2点本塁打を放ってダメ押しした。日ごろ、雨が降っても長靴を履いて練習してきた。「北海道で一番雨の日も練習してきた」。自信があった。

 今日19日は2年前、同じ舞台で初戦敗退した苦い思い出の日。ばんえい競馬の騎手だった父輝紀さんの44歳の誕生日でもある。勝負師の心得などを教わり、毎試合応援に駆けつけてくれる家族へ「遅くなっちゃうけど、甲子園をプレゼントしたい」。明日20日、準決勝の滝川西戦での勝利だけでは納得しない。【保坂果那】

 ◆1試合奪三振記録 北海道高野連によると、夏の南・北北海道大会では、北大会で2度の18個が最多だった。60年北大会準決勝の旭川北戦で滝川・鹿野哲宏が延長10回でマーク、98年北大会1回戦の奈井江商戦で旭川龍谷・三浦孝洋は9イニングで記録した。夏の甲子園では12年松井裕樹(桐光学園)の22個が最多。延長戦を含めると58年の徳島商・板東英二の25個。夏の連続奪三振は、68年北大会1回戦の滝川戦で網走向陽・船木慎史の8連続が南・北大会通じての最多で古谷が並んだ。