劇勝で24年ぶりVへ突っ走る。智弁和歌山が創成館(長崎)に延長10回11-10で逆転サヨナラ勝ち。1点を追う10回に黒川史陽内野手(2年)が2点二塁打を放ち、同校春夏通算60勝で18年ぶりの4強を決めた。

 サヨナラのヒーローは、お立ち台で20回以上も「野球の神様」を連呼した。1点を追った延長10回2死一、二塁、黒川が通常より深く守る左翼手の頭上を越えるサヨナラの2点二塁打。「神様が見てくれていた」「神様はいる」「神様のおかげ」。感謝は天に向かった。

 今大会は2試合通算7打数無安打。3回戦後、練習帰りの楽しみにしていたスイーツを断った。「そんなの食べてる場合じゃない」。現状を何かで変えたかった。中谷仁コーチ(38)は「練習量、野球に取り組む姿勢はぼくが見てきた中でもNO・1」と信頼する。午後9時に練習が終わる冬場、さらに1時間ノックを受ける。厳しい兄貴分の同コーチに「黒川が打てなかったら仕方ない」と言わせる。だからこそ、神は降りてきた。

 両チーム合わせて30安打の乱打戦だった。3点を追う2回、黒川が反撃のソロアーチ。最大5点差をつけられた5回裏に、9人攻撃で1点差に迫った。7回にエース平田が2点を失い3点差に広がるも、食らいつく。2点を追う9回2死満塁で平田が同点打。10回に1点を勝ち越されても「神様を信じてよかった」と力を取り戻した黒川が試合を決めた。黒川に始まり、黒川に終わった。

 父洋行さん(42)は上宮(大阪)で93年選抜大会の優勝を経験。サヨナラ打も打った。息子は普段から「父を超えるのが目標」と公言も、アルプスで見守った父は「2試合打ってなかったんで、まだまだ。でも超えてもらわないと困りますよね」と親子2代のサヨナラ打に目を細めた。

 高嶋仁監督(71)も興奮した。劇的な展開に06年夏準々決勝・帝京(東東京)戦を思い出した。9回に8失点もその裏に5点を奪い、サヨナラ勝ちした激闘の再現に「甲子園の女神がほほ笑んでくれた」と目を細めた。24年ぶり春戴冠へ、智弁和歌山にも神が舞い降りた。【堀まどか】