高校野球埼玉大会が南北2地区に分かれて7日、開幕する。高校通算56発の花咲徳栄(北埼玉)野村佑希内野手(3年)など昨年からの注目選手も多い中、にわかに県内で名前が広がっている投手がいる。浦和実(南埼玉)の140キロ左腕、英真太郎投手(3年)だ。

 英と書いて「はなぶさ」と読む注目左腕は今春、球が一変した。高校3年間での目標は「135キロ到達」だったが、6月に140キロの大台に到達。英も「一気に低めが伸び始めたんです」と驚くほど球筋が進化した。

 体は遠目に見ても細い。182センチ、62キロ。甲子園常連校の選手たちと比べると、明らかに細いが、練習後に浦和郊外のグラウンドから草加市の自宅まで走って帰っていた時期もあった。土居健太監督(25)は「ひざに水がたまったりで、冬にトレーニングできなかったんです」と悔やむが、地道な下半身強化が球速アップにつながったのか、英が「もっと体重が軸足に乗れば、まだスピードは増すと思います」と実感するほど調子は上向き。140キロ左腕の存在を耳にしたプロ野球のスカウトが1人、また1人と視察に訪れている。

 もともと、知られざる実績がある。昨夏の県大会5回戦で、全国制覇を果たした花咲徳栄と対戦。8回4失点、自責点1の投球を見せた。花咲徳栄の岩井隆監督(48)も「打ちづらい。彼はいい投手です」と瞬時に思い出すほどで、主砲野村も「英君ですか。打者から見て、角度の良い投手でした」と、しっかり球筋を覚えている。甲子園6試合すべてで9得点以上を挙げて日本一に輝いた強力打線を、数字上では最も抑えた投手だった。

 夏の初戦は11日(大宮公園球場)、山村学園に決まった。相手は優勝候補の一角だが、英は「甲子園に行くなら、いつかは当たるので」と気にしていない。当日はドラフト候補がいる浦和学院や埼玉栄の試合も同じ大宮エリアの球場で行われる。高校野球ファン、スカウト陣、報道陣が集結し、英のピッチングを数千人が見つめる可能性がある。野球人生を左右するマウンドとなるかもしれないが「試合中はキャッチャーミットしか見ていません。スタンドのこともほとんど見えていません」と意に介さない。最近は県内外の有力校との練習試合でも好成績が続く。「県内の学校で一番長い夏にしたい」。目標は、数万人の目にさらされる甲子園。珍しい「はなぶさ」の名を何度も響かせたい夏が始まる。【金子真仁】