水戸商は常総学院に敗れ、4強で夏を終えた。水戸商の河村一希選手(3年)は、記録員としてナインをベンチから声で支えた。「今までみんなで頑張って来て、つらいときも乗り越えてきた、でも目標だった甲子園に行くという結果が出なくて悔しいです」。涙を拭いながら話した。

 大会開幕約2週間前の6月22日だった。ノックを受けている時、二塁でフライを捕球し一塁への送球時。右足で踏ん張った際、鈍い音とともに右足首に激痛が走った。内くるぶしの骨折だった。病院で診断を受けた河村は「夏には間に合わない。悔しい」。これまでの3年間の思いを振り返ると、涙が止まらなかった。「手術をすれば良くなる」、医師の言葉に即答し、同月26日に手術を受けた。母麻紀さんはじめ両親から「結果が全てではない、どうやって来たのかだよ。その先必ず良いことがあるよ」と言葉を掛けられ、松葉づえをつきながら7月7日の開幕を迎えた。

 西川将之監督(33)から記録員としてのベンチ入りを勧められたことで「今できることを精いっぱいやろう」と前を向いた。2回戦から準決勝までの5試合すべて、チームメートを声で支えた。常総学院の強打線に打ち込まれても「まだ行けるぞ!」と声を張り上げる。しかし勝利には届かず、チームメートと一緒にベンチで結果を受け入れた。「グラウンドに立たないので雰囲気が分からないところもあるけれど、自分にできることはやれました」。高校卒業後は、野球をやらないつもりで、この夏を集大成にする予定だった。しかしけがをしたことで、「どんな形でもいいから野球をやりたい」。就職し、クラブ等で野球を続けたいと気持ちも変わった。

 一希、という名前には、1つのことをきらきらと一生懸命にやってほしい、との両親の願いが込められている。野球を一生懸命やる、その思いはこれからも続く。【戸田月菜】