第101回全国高校野球静岡大会が、6日に開幕する。全112校・111チームを紹介する連載最終回を飾るのは、浜松商だ。

チームは今春、16年ぶりの県大会優勝。好守で何度もチームを救い、県制覇に大きく貢献した瀧本翔斗中堅手(3年)が、リーダーの自覚を胸に名門を2000年夏以来、19年ぶりの聖地へと導く。【河合萌彦】

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瀧本は、最後の夏を前に苦い思いを味わった昨夏を振り返った。「何をやってもうまくいかず、野球を楽しめませんでした」。大会前から練習試合で敗戦を重ね、チームはまとまりきれていなかった。迎えた湖西との初戦。相手エースを崩せず、3-7と完敗。屈辱の1回戦敗退を喫した。

新チームでは「もう、あんな悔しい思いをしたくない」と、積極的にチームをけん引した。だが、秋季大会では実力を発揮できず、チームも早々と敗れた。冬には攻撃に偏重していた秋を反省し、チーム全体で守備を鍛え上げた。元々守備は得意で、鈴木祥充監督(56)から「落下点への入りが速く、飛球を、獲物を捕まえるかのように捕球するところが素晴らしい」と絶賛される。練習で仲間との連係が高まったことで、その自信はより深まった。

春は、その力を存分に発揮した。静岡商との県準々決勝では、終盤のピンチで外野への大飛球を好捕。浜松工との準決勝では、1点を追う7回に中堅への飛球をダイビングキャッチ。チームを勇気づけ、直後の逆転へとつながった。「練習から予測と準備を心がけていた。相手の振りを見て打球の方向をイメージできるので、最初の1歩を思い切りよく踏み出せた結果だと思う」と胸を張った。

打撃も好調だ。準優勝した5月の東海大会では、他県の強豪校相手に13打数7安打の好成績を残した。それでも夏に向け「もっとセーフティーバントなど小技を磨きたい」と、さらなるレベルアップを見据える。今大会は追われる立場となり、厳しい戦いも予想されるが「夏も勝つイメージはできている。優勝を決めるウイニングボールを捕りたい」と笑顔を見せた。

▽チームにとって、前浜松湖北監督で今年4月に浜松商へ赴任した田川智博部長(40)は大きな存在だ。試合前には、鈴木監督と選手起用などに関して意見交換。試合中は、ベンチ内でチームを鼓舞。相手を分析し、的確な指示も与える。試合後は、選手たちと「上積みーティング」と呼ぶ、話し合いを行い、その日に出た課題を確認するなど、多くの役割を担っている。浜松商で迎える最初の夏に向けて「自分は甲子園へ行きたくて教員になった。浜商はそれを狙えるチーム。どんな形でも貢献したいと思います」と話した。

◆浜松商の春優勝後の夏 過去6度あり、いずれも優勝を逃している。54年、8強。56年、2回戦敗退。60年、8強。77年、3回戦敗退。95年、8強。03年、3回戦敗退。

◆瀧本翔斗(たきもと・しょうと)2002年(平14)2月13日、浜松市生まれ。小2から浜松南リトルシニアで野球を始め、中学卒業まで所属。三塁手、二塁手で活躍した。浜松商では1年秋に外野に転向し、レギュラーに定着。今春の東海大会では、13打数7安打の好成績を残した。右投げ左打ち。167センチ、63キロ。血液型A。家族は両親、兄、弟。