ボールは右前に落ちた。1-1の6回2死二塁。南安曇農(長野)・村松和幸捕手(2年)の打球の処理を茅野の右翼手がもたつく間、走者が生還。勝ち越し点が入った。村松は「自分も貢献できた。支えてくれた先輩たちに感謝です」と口元をほころばせた。

ハンディを工夫で乗り越えた。農業校で実習が多く、部員全員がそろわないこともしばしば。その分、週2回の朝練を取り入れる。丸1日の実習で全体練習に参加できない選手は、グラウンドに設置した農業用ビニールハウスへ。みんな「夏はむちゃくちゃ暑い」と口をそろえるが、室内練習場として、暗くなってからもティー打撃ができる。

昨夏は金足農(秋田)の快進撃が励みだった。練習が終わって甲子園の結果を知るたび、大盛り上がりした。家が米を作る兼業農家で、植物の組織培養を学んでいる村松は「同じ農業高校。頑張って欲しかった」。造園を学ぶ主将の飯田駆二塁手(3年)は「僕たちも旋風を起こしたい」と意気込んだ。グラウンドの脇には、マネジャーたちが春に植えた3本のヒマワリが1メートルほどまで伸び、開花間近。“南農旋風”で花を咲かす。【古川真弥】