プロ野球元横浜(現DeNA)の投手で今年4月に就任した西城陽(京都)・染田賢作監督(37)が、京都大会で公式戦初勝利を挙げた。

選手の特徴を見定めた3投手の0封継投がズバッと決まり、田辺に逆転勝ちした。センバツ出場の優勝候補、龍谷大平安(京都)は、心臓手術から完全復活を期す奥村真大内野手(2年)が決勝打を含む3安打で快勝発進に貢献した。

   ◇   ◇   ◇

染田監督は最後にやっと白い歯を見せた。7回の逆転シーンでも表情一つ変えず、拍手すらせず。「内心は…(笑い)。喜ぶより、しっかり気合を入れ直さなアカンと思っていましたので」と照れた。

春の京都大会は初戦で敗れており、監督初白星。「初戦は難しいと分かっていたんですけどね。3年生は人として真面目な選手が多くて、いつもはもっと振れる打者が硬くなっていた。硬さをほぐしてやれなかったのは指導力不足です」。

謙そんしたが、監督のタクトは勝利に直結した。エース井上絋汰(3年)が本調子でないと見るや、1-4の3回から「流れを変えられる投手」というサイド右腕の横川竜之進(2年)を投入。その期待に応えて横川は3回無失点で相手の勢いを止めた。

6回からは強心臓の井上周汰(1年)を送り、直後の7回に逆転した。選手の特徴や性格を生かす継投策だった。最後4回を無失点で締めた井上周はエース井上絋の弟。「監督に体重移動を教えてもらって球がいくようになった」と感謝する。

就任時に選手に伝えたのは「日ごろの生活が野球につながる。学校生活をおろそかにするな。野球は自分を磨くための1つの道具であって、野球をしに高校に来ているわけではない」という心の部分だった。

04年に即戦力の自由獲得枠で入団した横浜では4年間で2試合登板に終わった。プロで栄光と挫折を味わっただけに、野球以外の指導にはこだわりがある。乙訓(京都)の部長として昨春センバツに出場した経験も生きている。目標は甲子園。「もう1度、課題を見直さないと。勝っていくには3年生の力が必要なので、彼らがフルスイングできるように今から準備します」。記念星の喜びに浸ることはなかった。【柏原誠】

◆高校野球の主な元プロ監督 明星(大阪)を63年夏の全国制覇に導いた真田重蔵監督は、50年松竹で39勝を挙げ、プロ通算178勝の名投手。評論家を経ての監督就任だった。池田(徳島)で3度甲子園優勝の故・蔦文也監督はプロ野球東急に1年間所属。元ダイエーの早鞆(山口)・大越基監督、元中日の常葉大菊川(静岡)・佐野心監督、元西武の九州国際大付(福岡)・楠城徹監督、元近鉄、阪神の天理(奈良)・中村良二監督らは甲子園に出場。昨年8月に智弁和歌山の監督に就任した元阪神の中谷仁氏は今春センバツに出場、8強入りした。ほかに元中日の東海大菅生(東京)・若林弘泰監督ら多数が指揮を執っている。

◆染田賢作(そめだ・けんさく)1982年(昭57)6月21日、奈良県生まれ。郡山(奈良)で3年夏に甲子園出場。同大4年春の京大戦で完全試合を達成。04年ドラフト自由獲得枠で横浜入り。登板は05、07年の通算2試合で08年限りで引退。教員免許を取り、15年に乙訓に赴任、野球部長。今年4月に西城陽に移り監督就任。右投げ右打ち。