<高校野球愛知大会:西尾東5-2中部大春日丘>◇15日◇3回戦◇小牧市民

「重すぎる。お前らが背負うな」とよく言われた。中部大春日丘(愛知)の瀧本駿主将(3年)は唇をかんだ。「中野さんと柏木先生のために戦いました。背負うことで強くなりたかった。絶対に甲子園に行かなければいけなかった。申し訳なくて顔向けできません」。

2月に中野竜司コーチが小細胞肺がんで他界。40歳。「時間を大事にしろ」が口癖だった。情熱的で理論的で生粋の野球人。亡くなる直前、家族の面会では眠ったままでも野球部の合宿の映像を流すと意識が戻った。「主人は毎日、ハルヒ(春日丘)のことを考えていました。何でこの試合にいないんだろう」。4歳の愛息と熱戦を見守った麻衣夫人(33)は涙した。

この日延長13回で敗れた西尾東には、昨秋の県3位決定戦で23-20の大熱戦で勝っていた。病状が進んでいた中野さんは無理に病院を抜け、4時間超の試合を見届けた。数日後、治療をやめた。この一戦が選手と最後の対面になった。

4月には、直前まで授業にも出ていた柏木芳幸副部長が肝臓がんで他界した。64歳。同校の監督を2度務め、強豪に至る基礎を築いた。斉藤真監督(38)は13年に柏木さんから監督を引き継いだ。「誰かのために頑張ると、すごい力を発揮する。それを学びました」。悲しみと向き合った選手たちに賛辞を贈った。【柏原誠】