東京学館新潟が糸魚川に2-1で競り勝ち、初の決勝進出。5回裏に1番其池勇哉遊撃手(3年)が右中間に勝ち越しの適時三塁打を放った。決勝は日本文理2年ぶり10度目、東京学館新潟は初優勝をかけて戦う。

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滑り込んだ三塁上で、其池遊撃手は味方の三塁側ベンチに向かって右腕を突き上げた。1-1で迎えた5回2死二塁。1ストライクからの外角直球を狙いすまして打ち返した。打球は右中間を割り、転がりながらフェンスまで届く。試合を決める勝ち越しの適時三塁打。「直球に張っていた」と話した殊勲者は「エラーした分を取り返したぞ、と仲間に言いたかった」と三塁上のガッツポーズを明かした。

守備のミスを帳消しにする長打だった。2回の守備だ。無死三塁の場面でゴロを無難に捕球。しかし、1度握り直してからの送球は、一塁手・五十嵐礼(3年)の頭上を越える悪送球になった。だからこそ、5回の打席は、1点を失った責任を自ら背負って立った。「自分のエラーを取り返すために、試合を決めたいと思った」。大きな一打は、83年の創部以来37年目で初の決勝進出を呼び込んだ。

ミスを起爆剤にして、打撃のヒーローになった遊撃手には、不思議とボールも飛んできた。ウイニングボールは其池が捕って一塁へ、華麗なランニングスロー。「一塁手の五十嵐礼から『絶対、フォローする。ショートバウンドでいいから低めに投げろ』と言われた」と、仲間の励ましに送球の不安は消えた。以後、7回巡ってきたゴロと飛球の処理を完ぺきにこなした。

学校では打撃の朝練習を繰り返して、会場入りした。フリー打撃、ティー打撃、素振りを3班に分かれて10分間ずつ積んできた。長谷和昭監督(58)から「ボールをつぶす意識で打て」というアドバイスをもらい、準決勝で実践。4打数2安打で1番打者の役目を果たした。「1年のときから甲子園を目標にやってきた。挑戦者として決勝に臨む」。其池の目標まで、あと1勝に迫った。【涌井幹雄】

▽東京学館新潟・長谷和昭監督「相手は隙のない王者だと思うが、完全燃焼して自分たちのできることやりたい」