福岡大会では昨年秋九州王者の筑陽学園が、今年春九州王者の西日本短大付との大熱戦を制して、16年ぶり2度目の夏の甲子園切符をつかんだ。

1点ビハインドの6回に進藤勇也捕手(3年)が左翼へ逆転2ラン。福岡からは8年ぶりとなる春夏連続の甲子園だ。

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筑陽学園ナインの思いを乗せた進藤の打球が、高々と舞い上がった。打球が左翼ポール際の芝生席で弾むとナイン全員が歓喜した。「打った瞬間、行ったと思いました」。チームを16年ぶり2度目の夏の甲子園に導き、春夏連続の聖地だ。

一塁側ベンチの江口祐司監督(56)も特別な思いで見つめていた。「あいつは勝負強いですから」。中学時代、糸島ボーイズで控え捕手だった進藤にほれた。「一人前の捕手になるまで、打撃は一切指導しなかった」とセンバツまでは捕手として育てた。迎えた最後の夏。江口監督は「準決勝からは自分を信じろと言った」と進藤を認め、投手陣を託せるまでに成長した。準決勝、決勝と2試合連続完投した西舘昂汰投手(3年)を手厚くリード。打撃でも成長を見せた。

進藤 センバツまでは打撃に自信がなかった。バットを上からたたく意識に変えたことで打球が飛ぶようになりました。

打撃力を上げ、5月以降で7本塁打目。ここ一番で最高のアーチを決めた。「直球だけを狙っていた」。磨いた配球を読み切り、初球を決勝弾にしてみせた。

江口監督も感慨深げだった。相手の西日本短大付は以前コーチをしていたチーム。阪神、日本ハム、メジャーで活躍した新庄剛志も育てた。「お世話になりましたし、恩返しできたかな」。相手ベンチには、新庄と同い年の西村慎太郎監督(47)がいた。「対戦すること自体、うれしいことです」と感謝した。

進藤 甲子園でも本塁打を打ちたいし、リード面でも投手陣をしっかりサポートしたい。僕たちの身上とする粘り強い野球をしていきたい。

センバツ8強。夏の福岡大会の大本命と目された重圧とも戦い、跳ね返した。九州王者対決を制し、センバツから大きく成長したナインが、全国王者を目指す。【浦田由紀夫】

◆進藤勇也(しんとう・ゆうや)2002年(平14)3月10日、福岡市出身。福重小年の時「福重バスターズ」でソフトボールを始める。内浜中では硬式「糸島ボーイズ」に所属。控え捕手として全国大会出場を経験。筑陽学園では1年秋からレギュラー。キャッチングと二塁まで1秒8の驚異的なスローイングの速さが定評。高校通算本塁打14本。尊敬する人物は野村克也氏。181キロ、83キロ。右投げ右打ち。血液型A。

◆筑陽学園 1923年(大12)に創立した九州家政女学院が前身。筑陽女子高に変更し、65年に太宰府高を統合して現校名に。生徒数は1443人(女子632人)。野球部は60年に創部で部員は70人。甲子園は春1度、夏は2度目。主なOBは長野久義(広島外野手)谷川昌希(阪神投手)ら。太宰府市朱雀5の6の1。新田光之助校長。

▽筑陽学園・中村敢晴内野手(92年夏の甲子園で西日本短大付が優勝した時の主将、中村寿博・日本文理大監督の次男)「僕たちの全員野球でつかんだ甲子園。積極的に打っていきたい」

▽筑陽学園・福岡大真外野手(94年夏の甲子園で樟南を準優勝に導いた右腕、真一郎氏の長男)「4番として勝負強さはあまり発揮できなかったけど、チームの勝利を第一に甲子園でも打ちたい」