日本代表のバットマンたちが、最後に意地を見せた。0-2の8回、一挙4得点でひっくり返した。

スペインの先発右腕、ジャスティン・ルナの前に7回まで2安打無失点。ベンチでは「まだこれから!」と声が飛び交うも、敗色ムードが漂い始めていた。

スペイン投手陣の情報は入手できていなかった。スタメンは9人とも日本を代表する強豪私立校の選手たち。いつもは何時間も、何度も、相手投手の映像を研究してから試合に向かう。それができないのが国際試合。5番の遠藤成外野手(3年=東海大相模)も「タイミングの取り方が難しい投手。(7回無失点も)焦りました」と、ぶっつけ本番の苦悩を明かした。

投手が代わり、ようやくやって来た8回2死一、二塁のチャンス。打席には3番の韮沢雄也内野手(3年=花咲徳栄)。いつもグリップから指1本分開けてバットを握る韮沢が、ベンチの指示でさらにもう1本分、短く握った。センターへしぶとくはじき返し、まず1点差に詰めた。

4番の石川昂弥内野手(3年=東邦)がすぐさま同点適時打を放ち、さらに2死一塁で遠藤に回った。1ストライクからの2球目は、外角低めの直球。「いつもは引っかけているコース」という球に開かず、しっかりと左中間に2点適時二塁打。「しっかり前の打者がつないでくれたので、思いを背負って打ちました」。バットを短めに、高めは捨てる-。首脳陣の指示も的確だった。韮沢、石川が相次いで生還したベンチに、ようやく本当の笑顔が生まれた。

初戦、慣れない海外、国際試合、木製バット、限られる情報…苦戦のリスクは多くあった。坂下翔馬主将(3年=智弁学園)は「これくらいプレッシャーがかかる状況でやらないといけないのは分かっていた。いい経験になった」と冷や汗の勝利を振り返る。夏を沸かせた球児たちが壁を乗り越え、まずは1勝をつかんだ。【金子真仁】