全国高校野球選手権の代替となる都道府県独自の大会は23日、山梨、富山などで開幕した。新潟では元日本ハム投手で帝京(東東京)のエースとして87年夏の甲子園で無安打無得点を達成した、帝京長岡(新潟)・芝草宇宙監督(50)が初陣を勝利で飾った。加茂農林に24安打の猛攻で27-0の5回コールド勝ち。練習試合を含めて初の対外試合での采配だったが、圧勝で1歩目を記した。

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初めてグラウンドで耳にする帝京長岡の校歌。「気持ちいいですね」。三塁側ベンチ前で芝草監督はじっくり聞き入った。同時に「負けて相手の校歌を聞くのは嫌。勝ち続けたい」。33年前の夏の甲子園2回戦、東北(宮城)を相手に史上20人目の無安打無得点で聖地を湧かせたヒーローの胸中に、当時の熱さがよみがえった。

帝京長岡は3回に14点を挙げるなど24安打の猛攻。「監督に『少し雑になると次に影響する』とアドバイスされた」。5安打9打点の西村俊亮三塁手(3年)が言うように、大量点でも選手には丁寧さを求めた。

新型コロナウイルスの影響で公式戦はもちろん、練習試合もしていない。大会前、唯一予定していた12日の中越との練習試合も降雨で2回ノーゲーム。「その分、学校での実戦練習が十分にできる、とプラスに考えた」。自校で紅白戦を重ね、疑問があるとプレーを止めて確認。ぶっつけ本番だが、精度を高めてきた自信はあった。もっとも、自身の采配には「なるべく選手を多く使おうと思った。ちょっとバタバタしました」と苦笑いした。

18年から帝京長岡の外部コーチを務め、今年4月に監督に就任。部活自粛中、毎日選手寮を訪れ体調管理し、個々と話し合うなどケアを欠かさなかった。「選手の良さを引き出したい」。一端を初采配でみせた。「(帝京の)縦じまを着ると気持ちが入る」。持ち前の負けん気で、選手とともに新潟の頂点を目指す。【斎藤慎一郎】