阪神や大リーグなどで活躍した藪恵壹氏(51)の次男で関西学院(兵庫)の雅博外野手(3年)が兵庫独自大会2回戦(ベイコム)で9得点の快勝発進に貢献した。駆けつけた父の前で「2番左翼」で出場。1回、先制点につながる犠打を決めたほか2安打1盗塁と躍動した。また、元阪神で松井秀喜キラーで名をはせた浪速(大阪)の遠山昭治監督(53)も公式戦初采配で白星デビュー。猛虎のDNAを受け継ぐ高校野球が熱い。

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プロで393試合に登板し、松井秀喜キラーの異名を取った浪速・遠山監督でも、高校野球の公式戦初采配初勝利は感慨深かった。「久しぶりに青春じゃないけど、生徒たちとやれることが喜ばしい。初体験で気持ちいい。1勝はうれしい。ワイワイ楽しくやりながら、僕らしいチームをつくってやろうと」。ベンチの最前列中央で選手たちと並んで声を出し、時には熱くなり過ぎてベンチから飛び出しそうになるほど一緒に戦った。9-1の快勝デビューに笑顔がはじけた。

知人に臨時コーチで誘われて昨年6月から指導を始め、11月から監督に就任した。冬場は厳しく鍛え、春から実戦でプロの技を伝えていくはずが、新型コロナの影響で2月末から6月中旬まで3カ月半活動停止。選手たちとも会えなかった。「今の3年生はなかなか野球ができなかった」と、就任初年度の3年生22人を思う気持ちは、特別強い。

大会前の練習試合は2敗1分け。「不安だった」と明かすが、この日は3番山本絃悟(けんご)外野手(3年)が4打数4安打2打点の大当たり。「(投手寄りの)右肩が打ちにいく時に浮いているぞ」。大会直前に授けたワンポイントアドバイスはばっちり。山本も「プロの考えを教えてもらえる」と快音で応えた。

結野(ゆいの)颯太主将(3年)からウイニングボールを手渡された遠山監督は、「いらねえよ」と照れ笑いしながら受け取った。ベンチ入りは20人。この日外れた2人は次戦でベンチに入れて戦う。「1試合でも多くやりたい」。3年生との青春タイムはまだまだ終わらない。【石橋隆雄】

◆遠山昭治(とおやま・しょうじ)1967年(昭42)7月21日生まれ、熊本県出身。八代一(現秀岳館)から85年ドラフト1位で阪神入団。1年目に先発ローテ入りして8勝。90年オフに高橋慶彦との交換でロッテ移籍。95年から野手転向。戦力外となった97年オフ、テストで中継ぎ投手として阪神へ。サイドスローに転向し、99年にカムバック賞。02年限りで引退。通算393試合、480回1/3、16勝22敗5セーブ、防御率4・38。05年から11年まで阪神2軍でコーチを務める。14年に学生野球資格回復。現役時代は178センチ、91キロ。左投げ左打ち。