将来性豊かなピカピカの1年生が集結した。今春で創部2年目を迎えた花巻東(岩手)女子硬式野球部に新入生36人が入部。総勢49人の大所帯となり、今夏に開催予定の全国選手権(兵庫)で公式戦に初出場し、まずはチーム1勝を目指す。県内出身で特別進学コースに在籍する沼倉未希投手は、“文武両道右腕”だ。萩荘中時代は生徒会長を務め、野球部ではエースで主軸だった。将来は教師を夢に描き、高校生活をスタートさせた。

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沼倉は高校でも文武両道を誓った。「勉強も部活動も、何事もやるからには、1番を目指す」。父研一さん(51)の教えでもあり、体現させるつもりだ。中学時代は生徒会長、学業成績も常に学年トップ。得意の英語は3年間“オール5”だった。将来の夢は教師。国立大の教育学部への進学を視野に入れている。「英語か保健体育の先生になりたい。野球もやって、文武両道のために、花巻東に入学した」と希望に満ちた表情で言い切った。

早速、勉強と野球の両立に励んでいる。岩手・一関市出身だが、入学式が行われた7日に「優桜寮」へ入寮した。特別進学クラスは週5日7時間授業で、朝8時から1限目が始まる。言うまでもなく、放課後は野球に打ち込み「結構、大変ですね(笑い)。でも、やるしかない。睡眠は取るようにして、合間を見つけながら、予習復習はするようにしている」と充実の高校生活を送っている。

人生初の寮生活は、2人部屋で“相方”は同じ県内出身の中沢さくら内野手だ。沼倉は「良きパートナーになっている」とお風呂上りには、お互いにストレッチをし合う仲だ。部屋の掃除も協力しながら、整理整頓を徹底させている。「一緒の部屋で良かった」と満面の笑みを浮かべた。

レギュラーの座をつかむ。中学の軟式野球部では、副主将でエースだった。高校でも「背番号1をつけたいし、打順もクリーンアップを打ちたい」と投打の二刀流を目指す。直球に4種類の変化球を操り、変幻自在な投球が持ち味。最大の武器は落ちるカーブで「打者のタイミングを外しながら、打ち取っていきたい」と言葉に力を込めた。

チームは今夏に開催予定の全国選手権で、公式戦の初陣を迎える。「みんなで協力し合いながら日本一を目指したい」。3学年49人が1つに結束し、花巻東女子硬式野球部に新たな歴史を刻む。【佐藤究】

○…花巻東女子硬式野球部は初心者も大歓迎だ。松田七海内野手は異色の“転向生”だ。岩手・遠野中時代は3年間剣道部に所属。それでも「野球が好きで、小さい頃からやりたかった」と高校での挑戦を決意した。県内出身で寮生ではなく自宅生。帰宅してからの日課は、筋力トレーニング、鏡でゴロ捕球の姿勢を確認することだ。「まずは練習についていくこと。最終的には、試合で活躍できるようになりたい。打撃練習でボールを遠くまで飛ばせた時がうれしい」。竹刀をバットに持ち替え、チームを勝利に導く快音を響かせる。

○…花巻東に憧れを持ち、東北の地にやって来た。山梨出身の末木希依(きえ)投手は「花巻東のユニホームを着たいと思った。先輩方も優しくて、野球のできる環境が整っている」と喜びを口にした。敷島中時代は笛吹ボーイズでプレー。兄克典投手(甲府工3年)とノースアジア大明桜(秋田)の最速153キロ右腕、風間球打投手(3年)とはチームメートだった。末木は「(風間)球打くんは、中学の時から球が速かったです。自分は緩急を使いながら、打たせて取る投球でチームに貢献していく」と1年生レギュラーを目標に掲げる。

○…武藤咲夢(さきむ)内野手は、帝京(東東京)で主将を務める闘夢(とむ)内野手(3年)を兄に持つ。武藤は「兄が憧れの存在でもある」と、身近な存在から刺激をもらっている。闘夢は1年生夏から遊撃手のレギュラーとして活躍。武藤は「先輩の足を引っ張らないように、自分の持ち味でもある足の速さを生かしたい」。笠懸中(群馬)時代は陸上部に所属していた。専門は短距離走で、50メートルは7秒3と快足を武器にする。守備位置は二塁手。兄に負けじと、レギュラー入りを目指す。「咲夢」の由来は「夢を咲かせてほしい」と命名された。「将来は、女子プロ野球選手になることです」と堂々と言い放った。