2年ぶりに開催された東北各県の高校野球春季大会。上位校で争われる東北大会(秋田)はコロナ禍の影響で中止となったが、夏本番に向け、東北の球児たちが熱い試合を繰り広げた。今回は「みちのく高校野球・春」を総括、その戦いぶりを振り返ります。今回は宮城、山形、福島の3県です。【佐藤究】

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【宮城】 

宮城の牙城はそう簡単には崩れそうにない。今春センバツ8強の仙台育英が、県内の公式戦連勝記録を「42」に伸ばし、春V2を飾った。背番号1の最速149キロ右腕・伊藤樹投手(3年)を筆頭に、投手陣は140キロ超え8人を擁する。打撃陣は仙台一との決勝で3ランを放った吉野蓮内野手(3年)、準決勝の東北学院戦でサヨナラ打を決めた渡辺旭内野手(3年)など、春の甲子園でも活躍した主力組は健在。夏に東北勢悲願の日本一を実現させる力は十分だ。

新戦力の台頭も目立った。1試合ごとにベンチ入りメンバーの登録変更が可能で、40人以上が試合に出場した。1年生も例外ではなく、仁田陽翔投手、田中優飛投手の両左腕の好投が光った。斎藤陽外野手と山田脩也内野手は、全5試合中4試合でスタメン起用され、センバツではメンバー外だった上級生も、結果でアピール。夏本番に向けて、レギュラー争いは熾烈(しれつ)を極めている。

【山形】 

山形は、酒田南が春の頂点に立った。準決勝・羽黒戦から2試合連続で延長決着。日大山形との決勝では、桐花幸甫内野手(1年)が延長12回2死二、三塁から決勝打を放ち、昨秋の東北大会4強を撃破した。投手陣はエース右腕・田村朋輝(2年)と1年生左腕・阿部勇翔の2人が軸となり夏も頂点を狙う。

【福島】 

福島は聖光学院の2大会ぶりの優勝で幕を閉じた。学法石川との決勝戦は先発全員安打の17安打をマーク。プロ注目の坂本寅泰(ともやす)外野手(3年)の先制3ランを皮切りに、大量13得点を挙げた。投げてはエース右腕、谷地亮輔(3年)を温存し、3人の投手リレーで逃げ切った。昨秋は県大会2回戦で東日本国際大昌平に6-7で敗れたが、一冬を越えてチームは一回り成長。夏15連覇に向けて、大きな弾みをつけた。

夏の県大会まで、残り約1週間。宮城と福島は7月7日、山形は同8日に開幕する。宮城は夏4連覇中の仙台育英が最有力の優勝候補だ。今春センバツ初出場の柴田、春県準Vの仙台一、同4強の東北学院などが後を追う。福島は夏の絶対王者、聖光学院がV候補筆頭ではあるが、昨秋王者の東日本国際大昌平、学法石川など強豪私学も侮れない。公立勢では春4強の磐城、第4シードの福島商も力がある。山形は昨秋東北大会4強の日大山形を筆頭に混戦模様。春を制した酒田南は9年ぶりの夏頂点を狙う。昨夏王者の鶴岡東は、コロナ禍の影響で春の県大会は辞退し、ノーシードから3連覇に挑む。

2年ぶりに開催される夏の甲子園出場を懸けた戦いが、もうすぐ始まる。(おわり)