<高校野球埼玉大会:八潮南17-0杉戸農>◇13日◇2回戦◇越谷市民球場

杉戸農の増田悠人内野手(3年)は、チームメートに声をかけ続けた。

「ショートとサード、締めて!」

「声を出して守っていこう!」

一塁手でスタメン出場し、2回途中からは捕手としてマスクをかぶった。

右耳には、補聴器をつけている。生まれつき、左耳は聞こえない。ベンチからの指示は気づけないことが多いため、一塁守備では近くにいる二塁手の伊藤■太内野手(2年)から教えてもらった。「明るい試合をつくっていくことを心がけて、声を出していました。結果には悔いが残るけど、チーム的に見たら悔いはありません」と試合後は笑顔だった。

積極的に走ってくる相手に、一矢報いた。3回2死一塁。一塁走者を二塁で刺した。「思い切り投げて、絶対にアウトにしてやろうと思っていたので、良かったです」。捕手は本職ではないが、少年野球時代の経験を生かしてショートバウンドも体で止めた。

野球部員の3年生は2人だけ。この日は他の部からの助っ人を、声で鼓舞した。一緒に練習したのは約1カ月間。「普段はボールも触っていないのに、みんなしっかり動いていた。きつい練習にもついてきていて、すごかった。助っ人に入ってもらって、ありがたかった」と感謝した。

試合は5回コールド負け。「悔しいけど、チームで声を出して引っ張れたので、もり上げられてよかったです」。単独チームで出場した大会は、忘れられない夏になった。

※■は寛の目の右下に「、」