目の前で起きた左前打3連打に、新宿の4番大村圭吾主将(3年)は奮い立った。「1番、2番、3番がつないで回してくれた。絶対、点をかえしてやる」。0-13で迎えた6回の攻撃。4点以上を取らなければコールド負けの土俵際で、無死満塁をつくった。だが、結果は空振り三振。「悔しいです。高めのボールを振ってしまった。チームのみんなに申し訳ないです」。

それでも、次打者の高橋寛太朗外野手(2年)が右翼線へ二塁打を放ち、2点を返した。そこまでだったが、最後の最後、チームとしての意地は見せた。大村は「最後は高橋が打ってくれた。自分たちの悔しさをバネに、また新しいチーム作りに生かして欲しい」と願った。

初戦の2回戦で富士に勝ち、7年ぶりの夏1勝を挙げた。田久保裕之監督(39)は「このチームは大村が3年間でつくった。あいつの3年間に100点をあげたい」と感情を高ぶらせた。1年の頃、野球をやめようとしたチームメートを思いとどまらせたのも、大村だった。今の3年生は、全員が高校野球をやり切った。

大村は「(田久保監督には)たくさん、しかられました。キャプテンとして頼りないことも多かった。『お前がチームを変えろ』と言われて、ここまで来ることができました。感謝でいっぱいです」と言った。監督と主将は、互いに感謝の気持ちを込めて握手した。