福島の高校野球史を塗り替えた。第7シードの光南が夏の絶対王者・聖光学院を5-1で撃破。タフネス左腕、星勇志(3年)が前戦(郡山商戦)から中1日で先発登板。疲れを感じさせない力投で9回を5安打1失点。2試合連続完投勝ちを飾り、大金星の立役者となった。聖光学院は星にとって、夏は2年連続、今春の県大会でも涙をのんだ因縁の相手。「打倒聖光」に燃えた星ら光南ナインが、ついに雪辱を果たした。

福島夏の勢力図を、光南のエース星が変えた。4点リードの9回2死一、二塁。カウント2-2。最後の打者は決め球のスライダーで空を切らせた。その瞬間、ナインは一斉にマウンドに駆け寄ったが、背番号1に派手なガッツポーズはない。顔色一つ変えず、淡々と整列に向かった。「勝ってうれしい気持ちはあった。でも、礼までしっかりやろうと思って、最後まで感情を出さなかった」。夏14連覇中の絶対王者を破っても敬意は忘れなかった。

堂々のマウンドだった。立ち上がりから3者凡退の好スタート。最速130キロ台前半の直球に、変化球を織り交ぜ、4回2死まで完全投球。5~7回までは得点圏に走者を背負ったが、要所はきっちり締めた。「ピンチの場面でも、冷静に投げることができた」。気持ちを強く持って9回を1人で投げ切った。

スタンドで見ていた当時の1年生が雪辱を果たした。「入学してから夏はずっと負けている相手」。昨夏の県独自大会決勝は0-6で敗れ、19年夏は0-5で準決勝で涙をのんだ。星は先輩の悔し涙をスタンドから目に焼きつけてきた。「これ以上、負けたくなかった」。3年連続の顔合わせ。三度目の正直でようやく勝利をつかんだ。

試合後、聖光学院の斎藤智也監督(58)から「甲子園で投げるのにふさわしい。勝ち上がって、負けるなよ」とエールをもらった。星は「うれしかったです。引き締めて、優勝を狙っていきたい」。ライバル校の思いも胸に残り2戦。負けられない。【佐藤究】