13年ぶり2度目出場の士別翔雲が、昨秋4強の知内に2-1でサヨナラ勝ちし、秋全道初勝利を挙げた。1-1の9回2死一、二塁で蓑島陽太右翼手(2年)が全道大会初安打となる左前適時打を放ち、8強進出に貢献した。

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士別翔雲が好投手を打ち崩し大きな1勝をつかんだ。9回2死一、二塁、蓑島は1ボールからの内角直球に食らいついた。最速147キロの左腕、知内の坂本拓己(2年)に対し「変化球は打てない。インコースの真っすぐだけ狙った。しっかり反応してボールをとらえられた」。打球は遊撃手のグラブを弾き左前へ。二塁から高貝陸投手(2年)が生還すると、本塁上で歓喜の輪が広がった。

簑島は3打席目まで無安打1三振。なかなかスイッチが入らなかったが、1-0リードの7回2死満塁、高貝が右前打を浴び追いつかれた直後、続いて本塁を突いた二塁走者を好返球で刺し、勝ち越しを許さなかった。「あのプレーで打席にも自信を持って入ることができた」と振り返った。

就任9年目の渡辺雄介監督(39)は「子どもたちが最後までよく粘ってくれた」と目を潤ませた。道大会は18年春に初勝利も、その後は出場3大会連続で初戦敗退。「どんなに練習しても名前を見て負ける。意識から変えなければと思った」。練習中の声掛けから全道を意識させ「どんな相手でも普段と同じように絶えず声を出してやるんだ」と繰り返し諭し、選手の頭にあった敗者の思考をぶち壊した。

昨秋4強でセンバツ21世紀枠の北海道地区推薦校に選ばれた知内を撃破しての8強進出。一度も甲子園出場のない名寄地区代表の公立校が、21世紀枠の北海道地区候補に一歩前進した。蓑島は「僕らは挑戦者。次も全力で戦いスローガンの“甲子園で校歌を”という目標を果たしたい」。地道に勝利を積み重ね、夢を引き寄せる。【永野高輔】

▼士別翔雲が秋の全道2度目の出場で初勝利をマーク。前回の08年は初戦(2回戦)で駒大岩見沢に0-4で敗れた。春の全道は、07年の士別との連合出場を含め5度で、18年1回戦で遠軽を11-1で下した1勝のみ。知内を破った今回が対南北海道勢の初白星となった。夏の北北海道大会は、20年の独自大会を含めて4度すべて1回戦敗退。