第94回選抜高校野球大会(3月18日開幕、甲子園)の組み合わせ抽選会が4日午後3時からオンライン方式で行われる。14年ぶり8回目出場の東洋大姫路(兵庫)は藤田明彦監督(65)が今大会限りで勇退する。右腕エースの森健人投手(2年)が花道の日本一を誓った。昨季公式戦はチーム0本塁打だが、手堅い攻撃と守り抜く野球で勝ち抜いてきた。伝統を貫き「最後の春」の花道を飾る。

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エースの森は抽選会を前に静かに武者震いした。「最後、監督さんを優勝まで導きたい。どのチームが来ても自分たちの野球ができるように、まずは初戦を大事にします」。昨秋公式戦は大車輪の活躍。ヤマ場だった9月の兵庫大会3回戦の報徳学園戦、10月の近畿大会1回戦の智弁学園(奈良)戦で完封するなど、登板8試合で防御率1・44の安定感だ。

身長169センチだが、最速144キロの速球で打者の懐を容赦なくえぐる。「右打者のインコース真っすぐが一番自信がある」。昨夏の公式戦後、藤田監督に勧められてカーブを習得。一気に開眼した。指揮官も「人の目は横についている。横の変化には対応します」と説明。浮いて緩いカーブの軌道は、打者の目線や間合いを狂わせる。強打者で鳴らした指揮官は打者目線で助言。速球自慢の森にとって、投球の幅が広がった。

1月、センバツ出場が決まり、藤田監督はナインに伝えた。「甲子園に出ると人生が変わってくる。いろんな道が見えてくる」。チームのテーマは全力疾走。今大会限りで勇退する指揮官は「勝ちたいのは当たり前。全力を出し切ってほしい。最後まで走りきりなさいと。その上で勝てればいい」と強調する。77年夏の甲子園優勝の強豪校は、全力プレーで特別な春に挑む。【酒井俊作】