あと1歩の差で力尽きた。昨秋東北王者で明治神宮大会4強の花巻東(岩手)が、4-5で市和歌山に惜敗。1-5で迎えた9回に1点差まで追い上げる執念を見せたが、相手エースでプロ注目の最速149キロ右腕・米田天翼(つばさ)投手(3年)を攻略することができなかった。再び甲子園へ-。ナインは春の聖地で浮かび上がった課題と向き合い、改善を重ね「岩手から日本一」を実現させる夏へとつなげる。

   ◇   ◇   ◇

【【一覧】センバツ出場32校完全データ 戦力評価、主なOB・OG付き/

4点ビハインドで迎えた最終回。花巻東ナインが、円陣で気合を入れ直した。「おっしゃー!」。誰も下を向かない。市和歌山のエース米田に立ち向かう。先頭の千葉柚樹内野手(2年)が初球を二塁打。続く代打の金拓門外野手(3年)も初球を振り抜き、適時二塁打で1点を返す。さらに犠飛で2点差。2死走者なしから安打、死球で一、二塁と反撃ムードが一気に高まり、ここまで無安打の主砲、田代旭主将(3年)に打席が回った。

「長打ではなく、つなぐ意識だった」。

欲を捨て「つなぎの野球」に徹した。初球。見逃せばボールかという低めに沈むツーシームをコンパクトに打ち返した。打球は二塁手の横を抜け、中前適時打で1点差に迫った。最後は追いつき、追い越すことはかなわなかった。佐々木洋監督(46)は選手の健闘をたたえながら、悔しそうな表情を浮かべた。

佐々木監督 簡単に終わらなかったところは非常に良かったと思いますが、何とか同点に追いつきたかったと思います

これが“甲子園の重圧”なのか。田代主将は言う。「甲子園のプレッシャーに負けた」。初回の攻撃だ。無死一、二塁の好機に3番佐々木麟太郎内野手(2年)、4番田代ともに高めの釣り球に空振り三振。高校通算56本塁打の佐々木麟は9回に死球で出塁するも、4打数無安打2三振。本来の姿を初の甲子園で披露することができなかった。田代は「いつもと違った。何か甲子園に来て感じたものがあったと思う」と話した。

大会屈指の好投手を攻めあぐねた。初回と9回を除いては散発3安打無得点。米田のキレのある直球と多彩な変化球を捉えることができなかった。田代主将は「もう少し、早く(米田投手に)対応できれば良かった」と言葉を振り絞った。

課題は明確だ。投手陣を整備し、守備力の強化を図る。この試合は無失策だったが記録に残らないミスが目立った。1-1で迎えた3回の3失点がその象徴。田代主将は「最後はミスをして取られた点数が響いてしまった。守備のミスを改善していきたい」と巻き返しを誓った。

借りを返しに夏の甲子園に戻ってくる。田代主将は「もう1度(夏に向けて)チームを一から作りなおす」と誓った。夏連覇を狙う盛岡大付を筆頭に、強豪校がひしめき合う群雄割拠の岩手。たった1枚の切符をつかみ、チームが掲げる「岩手から日本一」の使命を果たしにいく。【佐藤究】