第94回選抜高校野球大会に出場した近江(滋賀)が5日に地元の彦根市に準優勝報告を行った際、市のキャラクター「ひこにゃん」と記念撮影したことから「一騒動」が起こった。当初は日本高野連から日本学生野球憲章に抵触する恐れがあるとされ、7日になって急転、容認された。

近江は5日に岩谷斉校長(63)と多賀章仁監督(62)や山田陽翔主将(3年)らが同市役所を訪問。和田裕行市長(51)らと懇談した。その後、サプライズで登場した、ひこにゃんと写真撮影。同市から公式SNSへの写真掲載の可否を尋ねられた同校が滋賀県高野連に連絡し「商業的な利益関係に関する、日本学生野球憲章に抵触する恐れがある」と返答を受けたという。

7日の午前中も写真は掲載されず、同市の文化スポーツ部スポーツ振興課は「感動をありがとうございます、という意味を込めて学校側には知らせず、サプライズで市側が企画させていただいた。喜んでもらおうと思ったことがあだになってしまった。近江高校さんに迷惑を掛けてはいけない」と肩を落としていた。

一方で日本高野連は滋賀県高野連を通じて状況などをヒアリングし、日本学生野球協会と協議した上で不問となった。日本高野連は「よく頑張ったということで一緒に写真を撮ったということ。PRではないという判断。商業目的にはあたらない」と説明。この日の午後、同校で行われたセンバツ旗贈呈式の際に、直接、同校側に伝えた。

ひこにゃんは日本有数の人気を集める、ご当地キャラクターで2006年(平18)4月13日に誕生した。趣味は彦根城周辺の散歩だという。公式サイト内でファンクラブやブログなども設置。愛くるしく、ほんわかしたたたずまいで、多くの人たちを癒やしてきたが思わぬ形でクローズアップされた。この日の午後、公式フェイスブックで訪問時の様子が写真掲載され「応援したんだよを直接伝えられてよかったね、ひこにゃん」と胸をなで下ろした。

日本学生野球憲章は第1章の総則で「学生野球は、学生野球、野球部または部員を政治的あるいは商業的に利用しない」と明記する。第4章の学生野球資格と他の野球団体などとの関係のなかでも「学生野球が商業的に利用されてはならないこと」と明文化され、商業的な活動を禁じている。【酒井俊作】