第104回全国高校野球選手権西東京大会(7月9日開幕)に臨む東海大菅生が19日、横浜市内で大阪桐蔭と練習試合を行い、10-1で勝利した。

先発のエース右腕・鈴木泰成投手(3年)は、今春のセンバツ王者を相手に、5回3安打4奪三振で無失点と好投した。昨夏の甲子園初戦では、8回降雨コールドにより同校に敗れたが、この日は快勝。目標の日本一へ弾みをつけた。埼玉の浦和学院は、同校グラウンドで行われた国学院久我山(西東京)との練習試合に20-6で大勝した。

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鈴木は0で抑えると心に決めていた。初回に1死満塁のピンチを迎えたが、動じなかった。大阪桐蔭の5番海老根優大外野手を3球三振、6番田井志門外野手(ともに3年)を右飛に抑えると、「よっしゃ!」と雄たけびを上げた。

先輩たちの涙が胸に刻まれている。昨夏、甲子園初戦の大阪桐蔭戦は、降雨コールドで敗れた。メンバー外だった鈴木は、当時エースだった本田峻也投手(現亜大)から、言葉をかけられた。「大阪桐蔭に勝てるのはお前しかいない」。願いを託されたような気がしていた。

しかし、期待に応えられない日々が続いた。昨秋は右肘を疲労骨折して満足に投げられず、チームも都大会準々決勝で敗れてセンバツ出場を逃した。12月には同部を手術。投げることすらできなくなった。

しかしリハビリ生活を送っていた春先、今回の練習試合が決まった。コーチには「絶対にやります」と宣言し、5月上旬には実戦復帰。今月15日、若林弘泰監督(56)からこの日の先発を告げられた。手術後初の先発マウンド。「何点取られてもいい」と言われたが、鈴木は「何が何でも0で抑える」と決めていた。春の王者を相手に最速146キロの直球で5回無失点。有言実行の快投に、同監督も「今日はとにかく泰成だよね」と目を細めた。

だが先輩の悔しさを晴らせたとは思っていない。鈴木はひときわ言葉に力を込める。「次は完封を目指したい。去年の悔しさは、同じ甲子園の舞台で晴らしたい」。託された願いは、2年越しの甲子園でかなえるつもりだ。【藤塚大輔】

▼昨夏の甲子園、8月17日に行われた1回戦、大阪桐蔭-東海大菅生戦は、激しい雨の中で行われた。3点を追う東海大菅生が8回表1死一、二塁と好機をつくったタイミングで、無念の降雨コールドゲームに。7-4で大阪桐蔭が勝利した。この試合がきっかけとなり、継続試合が検討され、今春のセンバツから採用された。