第104回全国高校野球選手権大会が6日、3年ぶりに有観客で開幕した。37年ぶり出場の国学院栃木が、日大三島(静岡)を逆転で破り、夏甲子園初勝利を飾った。同点の5回1死一塁から、主将の4番平井悠馬内野手(3年)が左翼線へ決勝適時二塁打を放った。栃木県勢は夏の甲子園60勝目。同校は00年センバツでも開幕戦に勝利して4強まで進んでおり、ゲンのいい開幕星で勢いに乗る。

   ◇   ◇

勝負は主将が決める。同点の5回1死一塁、平井は狙い通りのスライダーを左翼線へ運んだ。「つなぎの意識で、落ち着いて楽しむことだけを考えました」。走者の生還を見届けると、ガッツポーズを作った。

決勝打の直前、5回無死満塁のピンチでも、主将の役目を忘れなかった。三塁のポジションからマウンドへ歩み寄り、2年生の盛永に声掛け。「智也、大丈夫だよ。周りを見て。(甲子園を)味わって楽しもう!」。左飛と2奪三振でピンチを脱した。6回以降は無安打と立ち直った盛永は「平井さんはチャンスで打ってくれて、ピンチでは点を取られないようにしてくれる。頼れる存在」と大きな信頼を寄せた。

野球を楽しむことが平井の原点だ。4歳上の兄彦虎さん(東北学院大4年)の影響で、2歳になると壁当てで遊んだ。母美奈子さん(44)は「本当に野球が大好きな子どもでした」と振り返る。

昨年秋、主将に就任すると、チームメートの大切さを知った。「1人では何もできない。それぞれの役割があることがわかった」。全員が力を発揮できる環境を作るために目を配った。開幕直前の8月1日には、甘党の盛永の誕生日に合わせ、ミルクレープをプレゼント。リラックスさせ、ナインの結束を高めた。

小さいころから、勝っても負けても涙を流す泣き虫な少年が、頼れる主将にたくましく成長した。夏の甲子園初勝利。「国学院栃木の歴史に名前を刻めてうれしいです」。平井の笑顔が弾けた。【保坂淑子】

◆栃木県勢の開幕勝利 夏は89年佐野日大以来33年ぶり2度目。佐野日大はエース麦倉洋一が自らソロ本塁打を放ち、近大福山を1-0で完封した。国学院栃木は00年春の開幕戦でも10-6で育英に勝っており、春夏を通じて2戦2勝。

【夏の甲子園】写真たっぷり 第1日詳細ライブスコア